インディペンデントシーンの異形にして、常に時代の先を行く姿勢と前衛的なサウンドが高く評価されている、Yves Tumor。昨年は来日公演も果たし、広く音楽好きな人から熱い支持を集めるバンド、bar italiaのメンバー、NINA。両者がサプライズのコラボレーション曲「WE DONT COUNT」を〈Warp Records〉よりMVと共によりリリースした。Yves Tumorにとっては、2023年の『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』以来となる正式なリリース作品となる。

「WE DONT COUNT」は、デュエットというよりも“共有された幻覚”のような楽曲で、フックの多いこの曲では、Yves TumorとNINAがベース主導のポストパンクに傾倒し、推進力のあるリズム、鋭利なギターの切り込み、そして催眠的なボーカル・メロディを融合させることで、両者の新たな一面が引き出されている。公式なコラボレーションは今回が初めてながら、NINAとYves Tumorのボーカルが持つ相互的な性質は「出会うべくして出会った」という必然性が感じられる。

本作はYves Tumorのグラムロック、ノイズ、R&B、宗教的恍惚といった要素が大胆に衝突したアルバム『Praise A Lord・・・』の続編としてもふさわしい曲である。このアルバムによってTumorは、ビジョナリーなソングライターだけでなく、ジェンダー、ジャンル、時代の境界を曖昧にする世代を代表するパフォーマーとしての地位を確立した。

一方でNINAは、彼女独自の音楽的変幻自在さを体現している。ローマ生まれロンドン在住の彼女は、アンダーグラウンドで最も独創的なビジョンのひとつを静かに育んできた。2025年だけでもすでに「TWINK」と「Till the devil gets bored」という2つのシングル、そしてローマ出身のアーティストOrazioとのコラボEP『Discordia』を発表。さらに、彼女自身の長編映画デビュー作『The Richest Man in Babylon』のオリジナルスコアも手がけた。この作品は、現代の緊縮財政がもたらす精神的・環境的な影響を不穏に描写しており、誘惑、沈黙、そして精緻な感覚によって、個人的かつ社会的な崩壊を探求している。