〈AVAVAV〉が消費主義と商業主義に飲み込まれるファッション業界を風刺した2026 SSコレクション『Soon on Sale』を発表した。

今回、ミラノでのショーに選ばれた舞台は華やかなランウェイではなく、値下げ札が乱舞するアウトレットストア。『Soon on Sale』と題されたこのコレクションは、創造性が消費主義に飲み込まれていく現代のファッション業界を鋭く風刺する内容となっている。

コンセプチュアルなルックブックとショートフィルムには、新品のデザインを披露するにはあまりにも陰鬱な背景にマネキンのように硬直したポーズをとるモデルたちと、その周囲で値下げ札の貼られたラックを奪い合う客の狂乱が映し出される。

値下げは失敗の象徴とされながらも、実際にはファッションシステム自体がそれに依存し、定価で55%売れれば成功とみなされる現実。デザイナーたちは絶え間ない“新しさ”を生み出すことを強いられ、その結果プロダクトライフサイクルは加速し、消費されては吐き出されてしまう創造性。小規模なインディペンデントブランドにとって、それは持続不可能どころか破壊的であること。資源を消耗し、仕事の価値を貶め、真にオーセンティックな創造の余地がなくなってしまうこと。 〈AVAVAV〉はこれらの現代のファッションシーンが抱える事実を30のルックで表現した。

「最近、常にルールを突きつけてくるシステムの中にいるという矛盾について考えることが多いんです。気づかないうちに、自分もそのルールに従ってしまっていました。小さなインディペンデントブランドとしては正当化できないショーに投資し、楽しめないスピー ドでデザインしたり、商品が店頭に並ぶ前にセールにかけられるのを見たり……。こんな状況で疲弊していなければ笑ってしまうほどです。」

「多くの人が、この矛盾に囚われていると思います。真にオーセンティックなものを生み出したいと願いながらも、大手ブランドが築いた枠組みに合わせて自分を調整してしまう。このコレクションは、その緊張関係を遊ぶように表現したものです。すでに価値を失ったかのように見える空間で新作を発表することで、価値がいかに脆くなっているかを浮かび上がらせたかった。悲しいけれど、どこか滑稽でもある 。そしてその疲労感とユーモアが入り混じったところに、今の私自身がいるのです。」 – Beate Karlsson / Creative Director

本コレクションでは、〈AVAVAV〉の核となる“ドリッピー・ゴス・ストリートウェア (Drippy goth streetwear)”と実験的なテーラリングをベースに、矛盾すら孕む新しい方向性へと拡張。常に“新しさ”を求める業界の要求を皮肉を込めて体現した。かつて2025年春夏に初登場した肋骨を想起させるプリントや加工は、今季さらにブランドのシグネチャーとして定着。クロシェやフーディー、シャツのパッチワーク、スケルトンのマキシドレスなどに吹き付けられ、切り込みを入れられ、縫い合わされた。また、それ自体が“新しいテーマではない”ことこそが今回のポイントにもなっている。

ファッションの“商品化”と“消費”が当たり前になった現代において、創造性の本質を問い直そうとする姿勢を鮮やかに打ち出した〈AVAVAV〉。滑稽で、痛烈で、どこか哀しみを帯びながらもユーモラスな『Soon on Sale』は、単なるコレクションにとどまらず、ファッションという行為そのものへの批評である。ランウェイを飛び越え、アウトレットという象徴的な場を選んだこの試みは、「価値」とは何か、「新しさ」とは何か、そして「創造」の本質を問いかける。


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