| Interview
Westside Cowboy

Photo: Charlie Barclay Harris
– 新時代のDIY –
Westside Cowboyが提示する「Britanicana」という様式と新たなる可能性
カルチャー、トレンドの移り変わりが激しいイギリスにおいて、今最も熱い視線を浴びているヤングバンドがいる。ルーツミュージックから現行インディーの躍動を “縫い合わせる” マンチェスターの4人組、Westside Cowboy。彼らの目に映る「Britanicana」という未来はどのようなものなのか。
– プロフィールによれば皆さんマンチェスター出身のようですね。今日のインタビューもマンチェスターから繋いでいるのですか。
Jimmy:僕とベースのAoifeはマンチェスターにいるよ。Paddyはリーズへ行ったり来たりで、ギターのReubenも別の場所にいたりするけど、基本的にはみんなマンチェスターで生活してるかな。
– そうなのですね、では改めて自己紹介もお願いします。
Jimmy:ギターを担当しているJimmyです。
Aoife:ベースのAofieです。
Paddy:ドラムのPaddyです。
Reuben:ギターのReubenです。
皆さんは *No Band Is An Island という取り組みに深く関わっていると聞きました。このバンドの枠組みを超えたコレクティブな活動は、結成当初からの共通した考え方だったのでしょうか。
( *No Band Is An Island:マンチェスターを中心にスタートした、コミュニティ、連帯、直接行動をテーマにした新しい音楽イベント)
Jimmy:そうだね。マンチェスターにいる他のバンド(Marshall ArtsやHolly Headなど)とかと一緒に始めたんだけど、彼らは政治的な音楽を書いているのに対し、僕らの音楽はそれほど露骨に政治的ではなかった。でも個人としては強い意見を持っていたりしていて、それを主張するためのアウトレットとしてこのコミュニティは非常に役立っていると感じるよ。
– このコミュニティには何人くらい、あるいは何組くらいのアーティストが参加しているのですか。
Jimmy:実はかなりオープンなもので、入りたいと言ったら入れるような緩やかな繋がりなんだ。最初は僕らとHolly Headというバンドと、エクセター(*イングランドの都市) のpushbikeというバンドで一緒にライブをしたことが始まりで、今ではもっと広い繋がりになっているかも。
– 昨年のグラストンベリー・フェスティバルについてお聞きします。Emerging Talent Competitionで優勝したことがきっかけで、フェスの本編にも出演していましたが、その経験について終えてください。
Paddy:このバンドは本当に運が良くて、全てが不思議な感じだね。友人の勧めで締め切り直前に応募して、トントン拍子で決勝まで進んだんだ。コンテスト自体はピルトンという村のホールで開催されたんだけど、ジャズ、メタル、R&Bなど、いろんなジャンルのバンドが計8組集まっていて、いわゆるインディーロックバンド、みたいなのは僕らだけだったと思う。優勝自体、今考えても信じられないね。
グラストンベリーではメインのWoodsies Stageだけでなく、小さなステージでも何度も演奏した。とにかく暑くて埃っぽくて、機材運びも大変だったけど、素晴らしい経験だったな。自分たちが “本物のバンド” になったと実感した瞬間の一つだった。
– フェス出演後、周囲の反応や環境に変化はありましたか。
Jimmy:グラストンベリーは、親戚や祖母までが知っている唯一のフェスだった(笑)。「音楽活動は順調みたいだね」と認めてもらえたり。それまではどんなにクールなDIYフェスに出ても説明が難しかったんだけど、グラストンベリーのおかげでようやく「本気なんだ」と伝わりました。おかげで「楽器屋のバイトはどうだい?」なんて冗談は聞かれなくなったよ(笑)。
– 現在は〈Nice Swan〉と〈Heist or Hit〉というマネジメントに所属していますよね。〈Nice Swan〉には他にcowboyyという名前のバンドもいますね。“カウボーイ” 同士での交流はあったりしますか(笑)。
Paddy:彼らのギグに行ったことがあるよ!レーベル契約が決まりそうな頃に、「僕もカウボーイって名前のバンドなんだ」って話しかけたんだ(笑)。彼らは素晴らしいバンドだから、いつかコラボできたらいいな。彼らの曲に「Gmaps」というのがあって、リフを延々と繰り返す演奏とか一緒にできたら面白そう。
– 誰でも参加できる、家にあるもので作る –
– ここから皆さんの音楽性についても聞いていきたいのですが、まずはバンドが謳っている「Britannicana(ブリタニカーナ)」という方向性について。ルーツにスキッフルというジャンルがあると聞いたのですが、これはどんなものですか。
Jimmy:スキッフルは、イギリス版の初期ロックンロールのようなもので、1950年代にLonnie Donegaという人物らが広めた、リズム&ブルースとフォークの融合みたいな感じかな。
Paddy:当時のイギリスはアメリカからの楽器の輸入制限があって、エレキギターが手に入りづらかった。だから、バケツやほうき、洗濯板などを楽器にして演奏していたんだ。
Jiimmy:その意味では「DIYシーンの原点」と言えるかもね。僕らの音はスキッフルそのものではないけれど、その “誰でも参加できる、家にあるもので作る” という精神性は取り入れているように思う。

Photo: Charlie Barclay Harris
– そのイギリス由来のDIYな精神と併せて、他方ではUSのインディー・ロック(Pixies、Weezer、Pavementなど)の影響も感じました。このあたりは親の影響とかなのでしょうか。それとも自分たちで掘り下げた?
Aoife:あ、ここはギターのReubenが答えた方が良いんじゃ?
Ruben:確かに(笑)。僕の両親はそういう音楽が大好きで、恵まれた環境で育った感じだった。他のメンバーは自分たちで見つけていったようですが、僕は家族から「人格を与えられた」ようなものかも(笑)。
Paddy:親の影響はもちろん受けるとして、それでもさっき名前の上がったバンドとかって、10代の頃に音楽に興味を持って聴き始めて、掘り下げていったら大体最後に行き着くようなものだよね。Pavementなんてまさに。少なくともここにいる4人はみんなそんな感じだったから(笑)。
– 縫い目 –
– 昨年はバンドとして初のEP『This Better Be Something Great』をリリースしました。こちらは2週間ですべて書き上げたそうですが、当時のバンドの雰囲気はどうでしたか。制作面、活動面など。
Aoife:当時はEPを作っているという意識すらなかった。まだ数回しかライブをしていなくて、大学や仕事が終わった後の夕方6時頃にパディの家に集まって、大きなアンプを鳴らしてジャムしていただけね。
Jimmy:本当に楽しんでやっていただけだったね。「Alright Alright Alright」という曲はReubenが数年前に作ったMac Demarco風のデモが元になっていて、それをバンドで合わせるうちに今の形になった。
– Mac Demarco?今の形からは全く想像できないですね。
Reuben:そうだよね(笑)。
– リードボーカルが固定されておらず、複数のメンバーが歌うスタイルはユニークだと思うのですが、なぜこのスタイルになったのですか。
Aoife:これは単純にその曲を書いた人が歌っているからだね。ReubenやJimmyが曲を持ってきて自分で歌う。バックボーカルも、誰かが「ここに入れたい」と思った自由に入れる感じで組んでいるね。
Jimmy:それこそさっきのスキッフルの精神にも通じると思うんだけど、みんな参加した方が楽しいんだよね。歌が上手いかどうかとかは本当に関係なくて。数ヶ月前のライブ音源とか聴き返すとひどいと感じるものもあるけど、そんなことよりもみんなでやった時にしか生まれないエネルギーの方が僕らにとっては大事なんだ。
– そこから半年の時を経て、2枚目となるEP『So Much Country ‘Till We Get There』をリリースしました。こちらは当初からコンセプトがあったのでしょうか。
Paddy:これも特定のコンセプトというよりは、その時期に聴いていたものや考えていたことの反映という感じだね。プロデューサーのLoren Humphreyと一緒に制作をして、スタジオこそ別だったんけど、今まで制作のプロセスが少し変わったね。自分たちが作ったものの「縫い目」が見えるような、完璧すぎない生々しさを大事にする形で進めていったよ。
– ちょうどLorenについても聞きたいと思っていました。直近ではGeeseのCameron Winterのソロアルバムも手掛けていたことで話題を呼んでいましたね。彼との仕事の中で新たな発見や刺激を受けたことは何かありましたか。
Jimmy:周りの環境が変わったとしても、「4人が部屋で演奏する」という軸はぶらさずにやりたいと考えていた。ギター2本、ベース、ドラム。この構成で作られていること。そうでなきゃ、それは僕らの曲ではないと思うんだ。Lorenは、そこにもう一つのレイヤーを加えてくれた感じがするんだ。僕らだけでは見つけることができなかった “2つ目の層” を。
Reuben:彼はとても実験的で、ある曲に「鞭(むち)の音」を入れようとこだわっていて、5種類くらいサンプリングしてきて選ばせようとしたんだ。結局採用しなかったんだけど、彼のそういう姿勢や発想は本当に面白いと思ったよ。
– EPのタイトルに含まれる「Country Music」という言葉について、これには「カントリー・ミュージック」という直訳と、目的地までの「長い道のり」という比喩的な意味があるように感じたのですが、実際のところどうなのでしょう。
Reuben:僕らはものに名前をつけるのが本当に苦手で… 。バンド名もそうだけど。曲のまとまりにタイトルを付けるのってすごく難しいなって思うんだよね。だから、今回は収録曲の「Can’t See」の歌詞から取ったんだけど。最初は歌詞の一部分でしかなかったけど、後になって、複合的な意味を持たせることもできると気づいたのと、自分たちが「オルタナ・カントリー」と呼ばれることへのちょっとした皮肉も込められるから良いかなって。
Aoife:最終的にタイトルはすごく気に入ってるね。まさにイギリスらしいスタイルだと思うから。本当に本音で言ってるけど、同時に「ただ本音を言うだけじゃダメで、ちょっと皮肉を言ったり、ちょっとしたツッコミを入れたりしなきゃ」みたいな。
まだまだ道のりは長いし、学ぶべきことも山ほどある。「これまでたくさんやってきたけど、まだ子供みたいな気分だし、みんなが期待してるような音楽を作れてない気がする」って思うのと同時に、「もう私たちをそんな風に子供扱いしないで!」って気持ちもある。「バンド名にカウボーイって入ってるから、カントリーミュージックをやってるんだ」なんて言われることにもうんざりしてる。そんな相反する二つの感情が落とし込まれてると思う。
– 今の話を聞いて、とてもよく伝わりました。言葉の並びからも、その二つの精神性が感じられると思います。
– 自分たちが誇れる音楽 –
– この作品を完成させた今、皆さんが謳っている「Britanicana」にはどれくらい近づけたと感じていますか。また、それを超えて新しいジャンルへと踏み込んだと感じたりはしていますか。
Paddy:「Britanicana」って言葉は、まるで僕たちがいつまでも「Britanicana」であり続けるような響きがあるよね。今回のEPがそれほど大きな転換点になったとは感じないかな。それに、僕らは何か音楽的な目標を猛烈に追い求めているようなバンドでもないし。僕らの音楽的な目標は、ただ良い音楽を作ること、自分たちが誇れる音楽を作ること、そして他の人たちが何かを得られるような、長く愛される音楽を作ることなんだ。それがどんなサウンドであっても、本物であればいいんだと思う。
Reuben:もっと実用的な観点から言えば、「Britanicana」と名乗るようになったのは、インタビューで「どんな音楽をやっているのか」とか「自分たちをどう表現するか」と聞かれた時に、何か答えられるようにするためだったんだ。当時はこれがどこへ行き着くかなど全く考えていなかったし、自分たちにとってそれが実際に何を意味するのかも深く考えていなかったから、それが表れていると思う。今では「Britanicana」という言葉に意味が生まれて、自分たちは「Britanicana」の音楽を作っていると感じている。でも、実際にはそれは本当のジャンルというわけではなくて、あくまで誰かが勝手に作った他のジャンルで呼ばれるのを防ぐために、自分たちで作り出した言葉に過ぎないんだ。
– その視点はとても面白いですね。
Reuben:自分たちで作り出したけど、それが本物という感じ。バーで誰かと会って「どんな音楽やってるの?」って聞かれた時に、「ああ、ちょっとシューゲイザーっぽいところもあるし、ポストパンクっぽいところもあるし、あれも少し…本当に影響を受けてるのは…」 なんて言うよりずっとマシじゃない?だから「Britanicana」に決めたんだ。

Photo: Charlie Barclay Harris
– EP 2枚をリリースした今、フルアルバムへの期待も高まりますが、今後の計画は何か決まっていますか。
Reuben:アルバムはどうでしょう(笑)。誰かが許可してくれればいつか作りたいね。
Jimmy:ABBAが『Voyage』をリリースした時みたいにホログラムとか作ってみたい(笑)。あ、でもそれだとホログラム制作に時間取られすぎてダメだね。そんな冗談はよして、そうだね、アルバムきっとやると思うよ。
– 直近の動きだと、やはりライブ活動が活発だと思いますが、Black Country, New Roadともツアーを回っていましたね。何か記憶に残っているエピソードはありますか。
Aoife:彼らとはカラオケに行ったね。本当に素晴らしくて優しい人たちだった。私たちにとって憧れのアーティストだったけど、実際に会ってみてみんな人格者だったことに本当に救われた。
– 3月からはGeeseのツアーのサポートも務めますね。ここ東京でもライブしていましたが、臨場感ある素晴らしいものでした。
Jimmy:楽しみなのと同時に緊張もしているよ。今まで経験したことのない規模の場所でライブすることになるみたいだから。あと、彼らは1年中ツアーをしていて疲れていないか心配です(笑)。一緒にビールを飲めたらいいな。
– そんなことは言いつつも、皆さんも自身のヘッドラインツアーはソールドアウト公演が出てきていますね。ロンドンのScalaや地元マンチェスターのGorillaなど。今回のツアーはどんなものにしたいですか。
Reuben:観客にはとにかく踊ってほしいな。映画を観るように静かに見守るのではなく、一緒に参加してほしい。結婚式のカバーバンドみたいな、みんなが楽しんでいる雰囲気が理想だな。地元のGorillaでのライブは、コミュニティの熱量を感じて最高だったよ。
– 最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Paddy:日本にリスナーがいるなんて驚きだね。本当に嬉しい。いつか日本に行って、音楽について皆と語り合いたいな。あと、新幹線って本当にそんなに速いんですか?(笑)
– 時速200〜300キロくらい出ますよ。
Reuben:え、そんなに速いの!だから “Bullet (=銃弾) Train” っていうんだね。いつか乗ってみたいな。
Aoife:すごい、すごすぎる。
– ぜひ遊びに来てください。
Jimmy:うん、楽しみしているよ。今日はお話しできて楽しかった、また東京で会おう。
■BIOGRAPHY
Westside Cowboy
2023年、マンチェスターで結成された男女4人組バンド。Jimmy Bradbury (Vo./ Gt.)、Reuben Haycocks (Vo./ Gt.)、Aoife Anson O’Connel (Vo./ Ba.)、Paddy Murphy (Dr)からなる。
2024年、デビューシングル「I’ve Never Met Anyone I Thought I Could Really Love (Until I Met You)」をインディペンデント・レーベル〈Nice Swan〉からリリース。
2025年、音楽メディア〈NME〉がその年注目の新人アーティストを選ぶ企画「THE NME 100: ESSENTIAL EMERGING ARTISTS FOR 2025」に選出。同年1月、イギリス最大級の音楽フェス Glastonbury が主催する新人オーディション企画「Emerging Talent Competition」で見事優勝し、夏にはフェスティバル本編へ出演。8月にEP『This Better Be Something Great』をリリース。
10月からロンドンのバンド、Black Country, New Roadのツアーにオープニングアクトとして帯同。
2026年1月、2枚目となるEP『So Much Country ‘Till We Get There』をリリース。3月からはUSのインディーロック・バンドGeeseのヨーロッパツアーのサポートとして帯同し、更なる躍進を続けている。

