Interview – Haloplus+
日本でのパフォーマンスを目前に控えるデンマーク/ コペンハーゲンの新たな3人組ユニットHaloplus+ 。イギリスとアメリカのどちらでも補えないコペンハーゲンの刺激的で独自のアンダーグラウンド・シーンを拠点に、異なる線で同じ点を目指すAngel Wei、xoxostine、ryongの3人はHaloplus+ でどのような創作を生み出すのか。そして近年注目されている北欧のファッションシーンのリアルにも迫った独占インタビュー。
ー ポップミュージックも好きだけど、嫌いでもあるんだ。当たり障りのない、あるいは本当に不愉快なものも多いからね。 ー
– どのようにHaloplus+は始まったのでしょうか?
xoxostine(以下、x):私たちは以前から友人で、最初からとても仲が良かったの。Haloplus+は私たちのコミュニケーションの延長線上にあるようなもので、流れるような親しみやすい会話をしていると、まるで小さな合唱団で一緒に歌っているような気分にもなれる。
メンバーの3人は全く違う人間だけど、音楽、グラフィック、アート、ファッションなど、お互いの感情やクラフトを深く理解したいという共通の考えを持っているから、プロジェクトは最初から非常に円滑に進んだし、一緒にさまざまなクリエイティブな活動を進めてきたの。
angel(以下、a):2年前の春に厳しいロックダウンがあって、メッセージやビデオチャットで多くの時間を過ごした時に、一緒に音楽を作るようになったと思う。インストゥルメンタル、ラフなデモ音源、ボーカルメロディのアイデアから現在リリースされた「Family Culture」や「maybe..」、「Waterfall(4 u)」はすべてその時期に生まれたんだ。その時点ではまだ音楽グループを作ろうとは決めていなかったけど、ryongがその年の暮れにソロコンサートを開いて、そこで僕らをステージに上げて、作った曲を披露してみないかと誘ったんだ。
そのライブがきっかけで、またブッキングされ、そしてさらにブッキングされ、そのたびに一緒に演奏したり歌ったりすることが充実して、何か自分たちを“Haloplus+”という一つの名前で括りたいと思ったんだ。ライブのたびにアーティスト名を“ryong+angel wei+xoxostine”と書くよりずっと楽だからね(笑)。
ー それぞれのバックボーンが組み合わさり生まれた視覚的な魅力 ー
– angelはFirst Hateとして以前インタビューしましたが、その時にAngel Wei名義でのソロプロジェクトについても言及していましたね。様々な名前の下で活動する中で、このHaloplus+はどういった立ち位置なのでしょうか?
a:僕たち3人はソロ・アーティストとしても、他のアーティストとの親密なコラボレーションでも活動しているんだ。それぞれが音楽、デザイン、美術、テキスタイル、パフォーマンスなど、さまざまな分野のバックグラウンドを持っていて、さまざまな方法でチームを組み、いくつかの名前、ミッション、美的表現を持っていることに慣れているんだ。
例えばxoxostineはFresh Maybe Newとして彫刻的なニットウェアを制作し、ryongはソロアーティストとして安定した作品を発表し、Usbeorn Deliveryというusbレーベルを運営していたり、xoxostineと僕たちの友人でアーティストのEliyah Mesayerと定期的にパフォーマンス作品に取り組んでいたりとかね。時々、それぞれのプロジェクトは床に投げられたさまざまなガラスビーズのようなものだと思うことがある。それぞれのムードのミクロの世界を含み、互いに異なる近接性を持っているようなね。その破片のいくつかは触れあって、他のいくつかは触れず、そしてあるものは炎が十分に熱ければ融合するかもしれない…。伝わるかな(笑)。
僕にとってFirst Hateのプロジェクトは、Antonと一緒に作り上げた独立した宇宙のひとつであって、最新の曲から最初の曲まで、赤い糸でつながっている。その後、Angel Weiを名乗るようになったことで、さまざまなアイデアやサウンド、美学を追求できるようになり、悲しみや不安など、よりダークでパーソナルなテーマも、心に深く刻まれるようになった。Haloplus+があることで、別のプロジェクトAngel Weiは、愛に包まれた新しいHaloplus+の世界に足を踏み入れ、より明るくポジティブな世界観を表現するキャラクターとして音楽スタイルに表れていると思う。
– なるほど。音楽以外にも様々な才能に溢れたメンバーの話を聞き、これからがさらに楽しみになりました。先日リリースされた「maybe. .」のパンク雑誌のような切り取り文字のストップモーションのMVは、こうした創作センスを持つグループならではと言えますね。
x:嬉しい!「maybe…」のビデオ制作はとても楽しかった。以前からストップモーションを作りたいと思っていて、歌詞のビデオを作ったらクールだろうという話がでたからストップモーションの夢を実現する絶好のチャンスだと思ったの。 angelと私で彼の家に集まって、DIYセットを作り、広告を切り刻み、1日がかりで完成させたけど、アニメーションは簡単な仕事ではないね。このビデオのルックは、私たちの仕事の仕方と、私たちの複合的なバックグラウンドの両方を反映されていて、自分自身もとても楽しんでいるわ。
ryong(以下、r):私は、音楽と同時に作品の視覚的な側面を作ることが好きなの。それは、より物理的なものに根拠を与えてくれるから、アートワークやコンサートの視覚的な側面は、音楽そのものと同じくらい重要と言えると思う。視覚的なアイデアがあれば音楽の文脈を生み出し、リスナーや参加者としてすぐに理解できる。簡単に言えば、雰囲気を作ってくれるよね。
ー 結局、一皮むけばみんな同じ ー
– この曲はどのような背景で作られて、どのような思いが詰まっているのでしょうか?
r:以前、学校でインストゥルメンタルを作ってangelに送ったら、すぐに携帯でラフな録音してくれたんだけど、その時の状態と最終的なトラックは95%同じだと思う。つまり、私たちは直感的に仕事をすることが多い。最初に思いついたものが、曲が完成したときにそこにあることみたいな。
a:なんとなく、この曲のインストゥルメンタルを聴いたときにどんな曲になるべきかがわかったんだ。この曲のテーマは、外見に基づく先入観やステレオタイプの対象であることに嫌気がさしていることについてで、人種的な特徴、性的な特徴など様々な特徴に基づくものなんだ。
デンマークは日本と同様、比較的民族的に均質な国であり、混血児として育つと、外国人であることを常に意識させられ、人からのアプローチの仕方や思い込みで、自分が生まれ育った場所に属していないことを自然と感じさせられる。
この曲の歌詞はより一般的なレベルでそうした偏見を扱い、それがいかに多くの形で現れて日常レベルで私たち全員にさまざまな形で存在しているかを考察しているんだ。そして曲のメッセージは結論づけるのではなく、推測するようなオープンエンドなものにしている。つまり、「結局、一皮むけばみんな同じで、役割を入れ替えたら、お互いにどう接するかは誰にもわからない」というような雰囲気になっているんだ。
とはいえ、常にみんなが自由に意見をいい、それを許すことにうんざりしている気持ちも込められている。“Maybe if you felt like I, maybe you would bite your tongue”の歌詞を言い換えれば、「お前は何も知らないんだから一度くらい黙っていろ」ということにもなる。
– サウンド関して言えば、この曲以外にもHaloplus+は常に“ポップス”の要素を大事にしていますよね。ポップスの要素があることで、時に詩の内容をより皮肉的で攻撃的なものにもしていると感じました。やはりあなたたちにとってはポップの要素はなくてはならないものですか?また、あなたたちが思う良い“ポップス”とはなんだと思いますか?
r:私は「実験的」と定義されるような音楽しかやらなかった時期があったけど、子供の頃からずっとポップミュージックを楽しんできた。ポップな感覚と定義されるものはあらゆる表現形式、たとえ奇妙でニッチな音楽でも通用すると思う。でも、これらのツールが商品化されたある文脈でより簡単に売れるのには理由があると思う。ポップツールやトリックの即時性は、リスナーにもっと明白で、しばしば他の表現よりも簡単に作ることができてしまう。それに当てはまるものを全て悪いことだとは言わないけどね。私にとっては、良いポップミュージックとは他のジャンルとそれほど変わらなくて、大胆で正直、自分自身が傷つきやすく、時には少しぎこちなく、恥ずかしくなるようなものだと思う。
a:僕もそう思う。キャッチーなメロディーを作るのも聴くのも好きだけど、極論を言えばポップスでもキャッチーである必要もないんだ。スタイルや形よりも「また聴きたい」と思ってもらえるかが重要なんだ。実験的で型破りなプロダクションを組み合わせたり、曲の中でイージーリスニングとチャレンジングな要素を継続的に交換したりと、ある種の矛盾やひねりが含まれているものも好き。いわゆるポップミュージックも好きだけど、嫌いでもあるんだ。当たり障りのない、あるいは本当に不愉快なものも多いからね。ただ、どんなクールなジャンルやサブジャンルにも、カモフラージュしている退屈でセンスのない音楽はあると思う。だけど、もしそれが新鮮に聴こえて誠実さを感じ、何度も何度も聴きたくなるようなものであれば、それは僕にとっていい音楽なんだ。
x:正直、ポップミュージックってなんなんだろう?多くの人が同じ曲やメロディに集まり、出会うこと以上に美しいことはないと思うし、一緒に歌うことで何か魔法のようなものが生まれると信じている。
ー日本とデンマークのファッションー
– 話は変わりますが、私たちのメディアはこれからファッションメディアにもなり、ファッションシーンへのアプローチをスタートさせます。そこであなたたちの住むデンマーク、北欧のファッションについてお聞きします。デンマークでSunflowerというブランドが急成長していたり、お隣のスェーデンのOur legacyは今や世界的なブランドになっています。ファッションだけでなく家具でも言われるように、普遍性があり遊び心と繊細さにあふれたデザインがあなたたちの地域で多く生まれていることは何か特別な環境が関係しているのでしょうか?
r:面白い内容だね!一つ言えることは、デンマークのブランドやアーティストの多くは、東アジアの美学、特に日本からも大きな影響を受けているということ。
a:そうそう。最近読んだ記事で、デンマークの海軍中尉が開国後の1860年代に日本を訪れ、日本文化に関する本を書いたことから、多くのデンマークのデザイナーが日本を旅するようになったと書いてあった。だからこそ日本とデンマークには共通してミニマルな美意識と、自然や日常生活の美しさへの興味があるんだと思う。そして、君が言うような繊細な遊び心は、そうした穏やかな環境がある場所だからこそ存在するものだと思う。デンマークの田舎や海はコペンハーゲンから簡単にアクセスできて、都会の喧騒の中にあっても、腰を下ろして静寂を感じられる公園が5分とかからずあるんだ。ryongが言ったようにデンマークのブランドやアーティストの多くは、東アジアの美学、特に日本にとても影響を受けていると思う。
x:デザインが生まれる具体的な環境としてデンマークでは、様々なデザインがシンプルで控えめな文化に根ざしていると思う。私は、身につけるアイテムや着こなしをよりチャレンジングに考えたいという気持ちがあるからそう感じるのだろうけど、正直なところコペンハーゲンの主なドレスコードはネイビー、ブラック、グレーって感じなの。でも素敵なデザインは決して排除されないというの良い点だし、一種の芸術の域だと思う。でも私から見ると日本のファッションはもっとホットだと感じるているよ。
– 日本とデンマークのデザインにそのような歴史があったんですね。確かに表現は違いますが日本の無駄を省く「和」や「禅」の文化に似ているものがありますね。では、そうしたファッションシーンと音楽シーンの関わりはどうですか?First HateのAntonがSunflowerのモデルをしていたりIceageのEliasは同ブランドのイベントでDJをしてましたが、2つのシーンは密接なのでしょうか?
r:正直にいうと刺激的ではないと思う。音楽シーンは規模に対してとても刺激的だけどね。
x:Ryongの意見と全く同じ。前述したようにデンマークのファッション文化は、非常に控えめな文化に強く根ざしていると思う。ここでは変わった服装をすると周りからジロジロと観られて色々聞かれるから、顔色を伺わないといけないの。ファッションシーンも、寒い気候のせいで、あまり盛り上がらないのかも。いつも「アメーエジングに見えてに見えて寒いのがいいのか、実用的で快適なのがいいのか?」みたいな難しいジレンマがあるし。私からすれば、そんなのレイヤードでどうにかすれば良いだけの問題でしょって感じだけど(笑)。
– 今回の来日でパフォーマンス以外に何か楽しみにしていることはありますか?
r:時間があれば、自然を見てみたいな。もちろん、食べ物もたくさん食べたい!
a:僕も食べ物!あと、そして、昨年コペンハーゲンで一緒にコンサートをしたLe Makeup、Dove、Kazumichi Komatsuにも会いに行くのが楽しみです。あと大阪の百舌鳥古墳群も見に行きたいな。
x:2人の親友と一緒に日本を訪れることができるなんて、本当にラッキーで、恵まれていて、特権的なことだと感じるわ。どこに行くか決める前に、何度も自分をつねって現実かどうか確かめる必要があると思う(笑)。でも、何でもいいので、お勧めのお店を教えて!
– 最後に読者へのメッセージをお願いします。
a:読んでくれてありがとう。強く生きて、友人を支え、批判ではなく愛で助け合うこと <33。
そして、大阪と東京のライブも見に来てね!忘れられない一夜になること間違いなしx2^<。
■Live Information
Date:05.04 @ Socore Factory(Osaka)
ACT:Haloplus+、Le Makeup、 Dove、 Kazumichi Komatsu
Date:05.07 @ Secret Show announcement until the day(Tokyo)
■Release Information
ARTIST:Haloplus+
TITLE:「Waterfall(4 u)」
RELEASE DATE:2023. 4. 23
LABEL:℗ 2023 HALOPLUS+