Interview – Luby Sparks
ギターロックを独自の解釈で昇華し、高い感度で海外の音楽シーンと共鳴してきた5人組、Luby Sparks。
デビューから今に至るまでの進化、ローカルの音楽熱、自主企画に込めた想いに迫る。
− 固定の国籍を感じさせないバンド、Luby Sparks −
– 昨年でデビューアルバムのリリースから5年が経ちました。ここまでの活動を振り返り、バンドとして特に成長した/変化したと感じる部分を教えてください。
Natsuki:もう5年も経ってしまったんだ、というのが率直な感想です(笑)。1stアルバムのリリースはバンド結成から1年目の制作だったので、それ以降本当にさまざまな経験や変化がありました。ごく普通の音楽サークルで大学生が集まり結成したこのバンドですが、昨年、インドネシアの野外フェスティバルでメインステージに立った時は、少しは”プロ”の演奏家として演奏出来たかな、と感慨深い気持ちになりました。しかし、活動年数の割に作品数が少ないので(笑)、今年はとにかく頻繁に楽曲をリリースするのが目標です。
– これまでに海外アーティストの来日サポートや海外公演を多数行ってきた中で、海外の音楽カルチャーをバックボーンとしながら、そのエッセンスをサウンドやビジュアルに落とし込んできたと思います。それらの経験も踏まえつつ、特に海外と共鳴すると感じる部分は何でしょうか?
Natuski:Luby Sparksを結成した当初から歌詞は全て英語と決めていて、これは自分が幼少期から慣れ親しんできた音楽が全て英語だったことと、海外での活動展開を目標にしていたことが理由です。昨年はアメリカ、中国、韓国、インドネシア、と様々な国で演奏する機会をいただけて、パンデミックが収束したことにより目指していたような海外を含めた広い視野での活動が可能になってきています。また、サウンドやビジュアルも含めてどこか固定の国籍を感じさせないようなバンドを目指してきました。常に世界的な音楽や映像のトレンドもチェックするようにしているので、当然自分のバンドで作るものにも無意識にムードが重なることもあります。
– 中国・韓国での人気はもちろん、インドネシアでもSquidやBlock Partyが出演した「Joyland Festival 2023」では大きな盛り上がりを見せていました。近年、東南アジアにおけるインディーロック熱は高まっているように見えますが、実際に現地に行ってみて発見した刺激的なシーンや音楽はありますか?
Sunao:インドネシアでは「Joyland Festival」以外にもう一か所演奏する機会があったのですが、そこでは色んなバンドがインディポップやドリームポップ、はたまたグランジなど、インディな音楽が多種演奏されていました。インドネシアにも普通にインディシーンがあるなぁ…と驚いた思い出があります。
− どこか “今っぽい” シューゲイズとしての新たな提示 −
– アルバム『Search + Destroy』がリリースされ1年半ほど経過しましたが、多くの人に聴かれ、世界中でライブパフォーマンスをした今、何か違った視点やアルバムの魅力、気づきなどはありましたか?
Natsuki:このアルバムの魅力は、1stアルバムの時には持ち得てなかったそれぞれの技術を駆使して、デモをしっかり作り込んでレコーディングに臨んだことによる、打ち込みやシンセサイザー などのプロダクションの豊富さや、プロデューサーAndyによる迫力のあるミックスでした。アルバムリリース直後のライブでは、音源に詰まっているそのダイナミクスやグルーヴを再現できずに苦戦していましたが、アメリカ・ツアーでの決して演奏しやすいとは言えないサウンド環境や、世界各国の様々なベニューやイベントで演奏を重ねたことで、生のバンド自体が持つグルーヴが徐々に楽曲を肉付けしていったように思えます。今でも久々に演奏する楽曲などはパフォーマンスに苦戦しますが(笑)、スタジオなどでリハーサルを行う時に、メンバーそれぞれの技術の向上を明らかに感じますし、すぐにその感覚を思い出せるようになっています。
– 1stアルバムでの青さを感じる歌詞、ティーンドリームな空気から、4AD直系な耽美なサウンドを展開したEP『(I’m) Lost in Sadness』。そして最新アルバム『Search + Destroy』では00年代初期を彷彿とさせる、エネルギッシュでパンクなアプローチと、作品ごとに異なる顔を見せてきたと思います。常に新しい可能性を見据えた作品作りの原動力はどこから来るのでしょうか?
Natsuki:やはり常に変動する世界の音楽やファッションのトレンドを追っていることも影響していると思います。また、2ndアルバム以降はメンバー間での共作も増えてきているので、メンバー5人それぞれの絶妙に異なるルーツやアイデアが、Luby Sparksの作品ごとの振り幅や変化を生み出しています。個人的にはRadioheadのように、作品ごとに異なるサウンドとテーマがあり、どのアルバムが好き?と意見が分かれるようなアーティストになることが理想です。
– 新作としては昨年の「A Thousand Miles」以来実に10ヶ月ぶりとなる「Stayaway」がリリースされました。随所に散りばめられた電子音が特徴的なトラックですが、今回はどのようなテーマ、または音楽の影響があったのでしょうか?
Natsuki:「Stayaway」は、Tamioが作成したデモを軸にそこへ僕が電子音などのアレンジを加えて完成していきました。「One Last Girl」を制作したTamioらしいヘヴィーでどこか切ないコードのバッキング・ギターがリードする楽曲だったので、電子音や打ち込みを混ぜてLuby Sparksらしくもありながら、今までよりも近代的などこか”今っぽい”シューゲイズとして新しく提示することを意識しました。
Tamio:実は4年前に制作した楽曲なのですが、どこか懐かしい感じのある仕上がりになったかと思います。コード進行もシンプルな印象がありますが、色々と細かく考えて制作したので、その辺りも注目して頂きたいです。
– 『Search + Destroy』以降の「I was…」〜「A Thousand Miles」から今回の「Stayaway」を見ると、引き続きアップテンポかつシンガロングできる雰囲気を持っているという点において、Green Dayの新譜やTurnstileなどを想起しました。00年代のエモ〜スクリーモの流れは今のバンドのムードに近いのでしょうか?
Erika:現在のバンドのムードはまた少し違うのかなとは思います。私がポップパンクやエモがど世代でTeenの時にかなり聴いていました。今でも00年代の音楽は、私にとって青春を蘇らせてくれるものです。そのような話をメンバーとしているとお互い影響しあっています。曲を作った時点では、Natsukiも聴いていたんじゃないかなと思います。Tamioは、私と一番世代が近いのでこの辺りの音楽の話はよくしますね。
– 現時点で次の作品(シングルでもアルバムでも)のイメージは何かあるのでしょうか?もしあればそれについて、まだなければトライしてみたいものを教えてください。
Natsuki:打ち込みやサンプリングを多用すること、ジャンルで言うとニューメタルやトリップホップ、ディスコパンクなど、エッセンスとしてLuby Sparksに取り入れてみたいアイデアはたくさんあります。このバンドはジャンルに捉われないという挑戦をしたおかげで、今ではどんなジャンルでも”Luby Sparks流”にアレンジして取り込めるようになっていると思います。
− “後にも先にも今この一度しかない夜 “ −
– 2月29日には自主企画『One Last Night』の3回目が開催されます。改めて『One Last Night』という企画のテーマ、コンセプト、そしてスタートの経緯を教えてください。
Erika:スタートは2022年の2月でちょうど「One Last Girl」のシングルをリリースした時でした。名前通り、特別な夜にしたい気持ちを込めています。この夜にしか見れない空間にしたいというのがコンセプトになっています。
Natuski:このイベントの名義「One Last Night」としては3回目の開催ですが、自分の中では過去に韓国のSay Sue Me、イギリスのYuckを招致したイベントから地続きで、自分たちがシンパシーを感じる/純粋に好きなアーティストと共演する、というイベントです。昨年、急遽開催したアメリカのPretty Sickとの共演もこのイベントの一環ですね。イベント名はシングル「One Last Girl」をもじっているのですが、このアーティスト同士の組み合わせ、そしてその場に遊びに来てくれた人たち、”後にも先にも今この一度しかない夜”、をテーマにしてます。
– この企画は第一回、第二回とLuby Sparksと親交のあるアーティストと共に開催されてきました。今回はSATOH、NTsKiのお二方が出演されます。どのようなテーマのもと出演が決まったのでしょうか?
Erika:私自身バンドサウンド以外のアーティストも好んで聞いています。メンバーが好きなアーティストをお誘いしました。
– 今回の企画のラインナップは少し異質でありながらも、最新作『Search + Destroy』で展開していた空気感との親和性は高いように思います。改めて出演されるお二方の音楽性についてどう感じているか教えてください。
Tamio:アーティストとしての個性を楽曲に取り込むのは自分たちも見習いたいと思っています。
音楽はもちろんファッションやアートワークからもレファレンスにしている時代やシーンが感じられながらも、それを現代的に再構築し、“Luby Sparksらしさ”が徐々に強くなってきたように感じます。こうしたオリジナルな魅力を自分たちで言語化するとしたら、どのようなところだと思いますか?
Natsuki:”Luby Sparksらしさ”が何か、というのは僕らにとっても永遠のテーマです。ちょうど昨年あたりはそこにとても悩んでいました。でもきっとこれは自分たちから無意識に出てくる部分にあるもので、意識して出来ることではないのだろうなと思います。意識してどんなジャンルにチャレンジしてどんなに新しい楽曲を作ってみても、この5人で演奏すると最後はどこかLuby Sparksらしく収まるんです。
制作、ライブ、企画と精力的に活動されていますが、今後バンドとして実現したいこと、挑戦したいことがあれば教えてください。
Shin:特に昨年は海外でのツアーやライブに力を注いでいましたが、国内に目を向けた活動、及び楽曲の製作等も精力的に行っていきたいです。
Erika:海外でも企画ライブをしたいですね。SNSにより誰とでも繋がれますし、国境なんて無いものだと思っています。もちろん日本でも精力的に活動したいです。日本でもツアーをやりたいですね。
– 最後にこの記事を読んでいる人、『One Last Night』に足を運ぼうとしている人へメッセージをお願いします。
Erika:今回の企画は、SATOHさん、NTsKiさんのパフォーマンスにも注目です。私達は、新曲も沢山演奏する予定です。Luby Sparksのフレッシュなパフォーマンスにご期待ください。会場でお待ちしております。
■ Release Information
ARTIST:Luby Sparks
TITLE:「Stayaway」
RELEASE DATE:2024. 2. 21
LABEL:AWDR/LR2
■ Live Information
Luby Sparks presents
‘One Last Night’
DATE:2024.02.29
ACT:Luby Sparks、SATOH、NTsKi
OPEN / START:18:00 / 19:00
VENUE:WWW X
ADV:3,500 Yen [+1D]
DOOR:4,000 Yen [+1D]
INFORMATION:WWW X [03-5458-7688]
TICKET|e+
[ https://eplus.jp/lubysparkspresents-onelastnight ]
■ Biography
Luby Sparks
Natsuki (ba/vo) Erika (vo) Sunao (gt) Tamio (gt) Shin (dr)。
2016年3月結成。2018年1月、Max Bloom (Yuck) と全編ロンドンで制作したデビューアルバム『Luby Sparks』を発売。2019年9月に発表したシングル「Somewhere」では、Cocteau TwinsのRobin Guthrieによるリミックスもリリースされた。
2022年5月11日にmy bloody valentine、Rina Sawayamaなどのプロデュース/エンジニアを手掛けるAndy Savoursを共同プロデューサーに迎え、セカンド・アルバム『Search + Destroy』をリリース。同年6月には、初のワンマンライブ「Search + Destroy Live」(WWW X) も行い、ソールドアウトとなった。10月にはタイ・バンコクでの海外公演を行い、2023年3月17日より、NY、ボストン、フィラデルフィア、サンフランシスコ、シアトル、サンディエゴ、LAの全7都市にて「US Tour 2023」、9月には中国「Strawberry Music Festival 2023」を含む全7都市「China Tour 2023」、10月には韓国のストリートカルチャー・コンベンション「FLOPPY 1.0 – Let’s FLOPPY」、11月にはインドネシア「Joyland Festival」へ出演を行うなど海外での展開も積極的に行なっている。