Interview – South Penguin

1st EP『alaska』をリリースして以降、日本のオルタナティブ音楽シーンの最前線で活動してきたSouth Penguin。およそ3年ぶりとなるフルアルバム『R』は、フロントマン、アカツカが持つ多様なバックグラウンドが随所から感じられる作品となった。常に革新的、多角的に日本のカルチャーを捉えてきたバンドが今作のリリースをもって何を目指すのか。ORMの独占インタビューで掘り下げる。

ー 路上で培った野生的なパワフルさ ー

− バンドの簡単な自己紹介をお願いします。

非常に険悪な状況が続いたことで元々は4人組だったのですが、僕一人になりました。それ以降、メンバーとは拳で語り合い、血で歌詞を書いてって感じです。

− こんなにふざけていいんですか(笑)

基本的には流血に重きを置いたバンドですね。My Bloody Valentineって感じですね。それは冗談で、別に険悪なことは全くなく様々なことが重なり、それからはサポートメンバーに手伝ってもらっているという感じです。人数も7人で大所帯なバンドですね。

− どのような過程で今のメンバーに出会ったのですか?

基本的にはストリートファイトですね。路上で培った野生的なパワフルさが今でも生きているのかなといった感じです。だから一度はみんな拳を交えています。

− メンバーと年は近いのですか?

みんな僕と同い年かそれより下にしています。一番偉ぶりたいので。ただ、箱根駅伝が好きなので駅伝選手の年齢くらいの人はリスペクトしています。

− サポートメンバーに正式加入してもらおうと考えたことはありますか?

加入して欲しいなとは思っているんですが、少しシャイなところもあって伝えられていないです。このメディアを通じて知ってもらいたいですね(笑)。

− レーベルや国内関係なしに注目しているアーティストはいますか?

今までは疎かったんですけど、aikoは良いですよ。うちのサポートドラムはaikoとBob Marleyしか音楽を聴かなくて。彼からaikoの話をよく聞いていて、2021年にリリースされた『どうしたって伝えられないから』を聴いていたら「カブトムシ」級の名曲しかなく、やはりaikoは素晴らしいなと思いました。

− 今までインタビューしたアーティストとは違った視点でとても面白いです。ご自身の曲を作るときもメジャーシーンのアーティストを参考にしたりしますか?

今作に関してはそのまま引用している歌詞とかがある程、乃木坂46の影響は大きいです。日本の商業的でメジャーで活躍している方たちの音楽も斜に構えず普通に聴きますね。海外のアーティストに関しては昔のものばかり聴いているので、あまり新しいものは知らないんですが、この間たまたまVoka Gentleというバンドを見つけました。ジャケが70年代プログレみたいで気になって聴いてみたんですが、キモさもあるしいい意味で予想を裏切られる感じでカッコ良いなと思いましたね。「Kestrel」という曲とか特に好きですね。

− 昨年はバンド、あるいは個人としてどのような一年でしたか?

2021年はアルバムを作っていたので“制作の年”でしたね。コロナでライブがあまりできなかったので、みんなを驚かせようっていう気持ちで作品を作っていました。

− 制作に取り掛かり始めたのはいつ頃ですか?

デモをバンドメンバーに持って行ったのが5月で、スタジオで一発録りで1日で全曲録音して作ったので、ものすごいスピードで動きました。

− 「vitamin」と「gadja」にはDos Monosがフィーチャーされていますが、どのような経緯があったのでしょうか?

Dos Monosと作った曲をとりあえず出そうという話を荘子it (Dos Monos)としていました。「こんなデモできたんだけどどう?」と彼に送ったら「じゃあ、Dos Monos 全員で参加しよう」ということになりました。この曲がきっかけとなり、今回のアルバムを作ることになりました。

ー 昔から好きでやっていることに変わりはない ー

− 今作『R』のテーマやコンセプトなどはありますか?

今回はテーマもコンセプトもなくて。自分が作ったデモのストックの中からアルバムとして出したい曲をリストアップし、メンバーに聴かせてバンドのアレンジを考えました。前作『Y』では “美しさ” というテーマがあったのですが、今回はその時の気分で思うままに作りました。『R』というタイトルもアルバムの曲も聴かせないでアートワークを作ってもらったときに、色が赤で自分の名前もアカツカだったことから“Red”の頭文字を取りました。

− 前作の『Y』のタイトルはどのような経緯で付けたのですか?

The Pop Groupの1stアルバムのタイトルが『Y』なんです。この作品には初期衝動的な美しさや、歪な美しさが詰まっていると感じていました。ポストパンクやニューウェイヴが好きでそれにあやかりたいと思い、『Y』というタイトルにしました。元々好きで聴いていた音楽はニューウェイヴなどで、Talking Headsが始まりです。未だに彼らは好きでオマージュも多く取り入れています。David Byrneのソロも好きです。

− 先日Luby Sparksとのツーマンライブを見に行きました。サックスが強めの曲やフリージャズの要素が感じられました。最近のイギリスでもジャズとロックが融合するような流れがありますが、そのような音楽から何か影響を受けたりしていますか?

最近の流れはあまり分からないのですが、フリーキーなサックスが入っているのはThe Pop Group とかJames Chanceの影響が大きいです。“実験”とかたいそうなことではないですけど、ニューウェイヴ / ノーウェイヴ的なアプローチをポップスに落とし込みたいと思っていました。

Photo:Yoshitake Hamanaka

− 1st EP『alaska』の歌物っぽい音楽性から変わり、『house』から現在に至るまでの作品はより前衛的で雑多な空気を感じます。今のバンドのモードとしてはどのような方向性を考えているのでしょうか?

バンドにはあまり意味を持たせてないですね。今回もコンセプトはないし、自分がやりたいことをやっているだけ。『alaska』から『house』になった時もキーボードが加わり、できることの幅が広がったというだけで昔から好きでやっていることに変わりはないです。

− 活動を始めた段階で現在のバンドの姿をイメージしていましたか?

元々はTalking Headsのようなバンドをやりたかったんです。ただ1st EPの段階では技術が足りず、自分の思い描いた音楽をうまく表現することはできませんでした。今は演奏技術も向上して、昔はできなかったことが段々とできるようになったと思います。

− Talking Headsで一番好きなアルバムはなんですか?

『Remain in Light』ですね。初めて買ったアルバムですし。ずっと好きですね。ジャケもかっこいいですし。あとは『Speaking in Tongues』も好きですね。

− 「This Must Be The Place」とか。

そうですね。10年くらい前に、その曲をMGMTがカバーした動画をYouTubeで観てから彼らのことも好きになりました。

− MGMTがお好きということはそれに近い年代の音楽も学生時代には聴かれていましたか?

聴いていました。ただ、MGMTは別に“年代”を意識して聴いていたわけではなかったです。彼らを知ったのはまだ「Kids」が出た頃くらいでした。当時、大学のサークルの先輩で音楽に詳しい人が「これ聴いてみなよ」って色々教えてくれたりして、それがMGMTと同世代の音楽だったりすることはありました。大学時代にMGMTのライブをSUSURUと二人で観に行ったりしてましたね。

− YouTuberのSUSURUさんですか?

はい。SUSURUは僕が所属していたサークルの一個上の先輩で、YouTuberになる前から友達です。一度ライブでパーカッションをやってもらったこともあります。

− そうだったんですね、すごいつながり(笑)。

Photo:Yoshitake Hamanaka

ー 自分をもっと受け入れてくれるところに行きたい ー

− 話が変わりますが、お笑いに興味があると聞きました。

お笑いにはかなり影響を受けていますね。思いついた言葉をただ羅列していくという霜降り明星のせいやさんの芸があるんですが、それが面白くて。予想もしなかった言葉とかが出てくるんですよ。その芸がなぜ面白いのかを考える中で、自分もその手法を試すことで理解できるんじゃないかと思い、「thinker」という曲で試してみました。あと、“知性や品格を感じるもの”が好きなので、お笑いも知的なものが好きです。バナナマンやハライチとか。あとは最近まんじゅう大帝国が好きで影響を受けています。

− 最近(まんじゅう大帝国さんと)一緒にライブをされていましたね。

そうです、代官山で一緒に。それまで交流があったわけではないんですが、興味がありすぎて「一緒に何かしたい!」と彼らに連絡をしました。かなりアバンギャルドなライブになりましたけど(笑)。僕らが演奏してスッといなくなって、急にまんじゅう大帝国が出てきて漫才して、また僕らが出て演奏してみたいな感じで、交互に3ターンくらいするという(笑)。彼らと話しているとミュージシャンとは違った視点があって興味深いです。すごく良い友達ができました。

− 以前に他のインタビューで今の日本の音楽業界について感じることがあるようでしたが現在はどのように考えていますか?

多種多様な音楽を受け入れる土壌は全然出来ていないと思います。インディー(音楽)に限った話ではないですが、芸人さんって日本で芸人として売れたらそれはもう“日本で売れている人”じゃないですか。でも今の日本で“音楽で売れた人”で音楽以外の場所で見ることはあまりないと思うんですよね。

− たしかに…

なんとなくミュージシャンよりもお笑い芸人とかの方が市民権を得ていますよね。それは求められているから仕方ないんですが。ただ、それによって日本で音楽をやることに対して「夢がないな」って思ってしまう人がいて、才能ある人が音楽に手をつけないことがあったりしたらもったいないなと思います。

− 海外で音楽をやろうという考えは?

海外にも行きたいとは思いますが、それより自分をもっと受け入れてくれるところに行きたいですね。肌で感じることとして、日本はあんまり開けた場所ではないなと。それだと、新しい音楽は生まれにくいですよね。

− では最後に今後の目標や展望、読者へのメッセージをお願いします。

テレビに出たいですね。ミュージックステーション、バズリズム、関ジャム、紅白…ですかね。音楽番組全般に出てみたいです。音楽は本当に真摯に制作していますし、良い作品を作っているという自負があるので自分の音楽をもっと広めたいです。最後にメッセージか。そうですね、フォローとリツイートしてください。あとチャンネル登録、高評価も。


■Release Information

ARTIST:South Penguin

TITLE:『R』

RELEASE DATE:2022. 3. 2

LABEL:AWDR / LR2

TRACKLIST:
1. vitamin feat. 没 a.k.a NGS
2. thinker
3. fancy
4. luv revolution
5. gadja feat. Dos Monos
6. night walker
7. n.t.

South Penguin『R (LP) 』

RELEASE DATE:2022. 3. 26
ORD No.:DDJB-91222
PRICE:2,727 Yen + Tax
Bonus Track: gadja feat. 環ROY (Track 4 on Side B)

3月18日にShibuya WWWXで開催されるアルバムリリースパーティーで先行販売予定。


■Live Information

「South Penguin “R” release party.」

DATE:2022. 3. 18

ACT:South Penguin, Dos Monos

GUEST:環ROY

OPEN / START:18:00 / 19:00

ADV:3,500 Yen [+1D]

DOOR:4,000 Yen [+1D]

INFORMATION:
WWW X [03-5458-7688|https://www-shibuya.jp/schedule/014321.php]

TICKET:https://eplus.jp/s_penguin-wwwx


■Live Information

「NEURON」LIVE HOUSE Pangea

DATE:2022. 3. 29

ACT:South Penguin、TAMIW and more

OPEN / START:18:00 / 18:30

ADV:3,000 Yen [+1D]

DOOR:3,500 Yen [+1D]

INFORMATION
TICKET:https://eplus.jp/neuron


■Biography

South Penguin

2014年に東京で結成されたオルタナティブバンド。2016年、EP『alaska』でデビュー。
翌年6月に台湾での初の海外ライヴを行った後、アカツカ以外のメンバーが全員脱退。その後は、サポートメンバーを迎え活動。同年2nd EP『house』をリリース。
2018年、中国のフェス「Taihu Midi Festival」を含む中国ツアー、2019年には台湾のフェス「WAKE UP FESTIVAL 2019」を含む台湾ツアーを行った。
2019年に1st Album『Y』と2020年の7インチ「bubbles / mad love」をのリリースを経て、2021年8月には二度目の「FUJI ROCK FESTIVAL」出演。