| Interview
PUNCTUM TEST

静かに貫く突発的な感覚。
1つの “Punctum” から生まれる繊細な官能性。
– まず初めにブランドについて教えてください。どのようにして始まったのでしょうか?
〈PUNCTUM TEST〉は、私たちが学校を卒業する直前に プロジェクトブランド〈Project orog〉としてスタートしたんです。学生生活の終わりが近づく頃、「30歳になる前に、本当にやりたいブランドを作ってみない?」と2人で話し合ったことがきっかけでした。そして、すべてが男性によって定義されるのではなく、“女性が感じる官能性”を表現する服をデザインしたいという、ごくシンプルなアイデアから始まりました。
-「女性が感じる官能性」とは具体的にどのようなものでしょうか?女性である、あなたの感性と言葉で理解できたらと思います。
鏡を見て「わあ、今日は最高に気分が良い」と思う日があって、その自信こそが「女性が感じる官能性」と呼んでいるものです。それは、多くの男性が感じるような、体にぴったりとフィットするトップスやコルセット、体を押し上げて露出するようなドレスのことではありません。それらは長い間「セクシー」と呼ばれてきましたが、それは私たちの内側から来るものではなく、私たちが着せられてきたものです。体そのものは本来官能的であり、すべての女性の体は美しいものです。
だから、この感覚を単一の形や定型に還元することはできません。「女性が感じる官能性」とは、服が着る人の存在を映し出し、その人だけが持つ美しさを引き出すことです。そういった意味で私たちの服は、それぞれの女性が自分自身の方法で官能性を表現する自由を与えます。私たちのアイテム「6-hole sleeveless」は人によっては繊細にそれを現すかもしれませんし、「Vessel」の円筒形は体を包み込み、その自然な曲線と静かな強さを際立たせてくれます。
– Punctum(プンクトゥム) –
– 〈PUNCTUM TEST〉というブランド名の由来を教えていただけますか?「Punctum(プンクトゥム)」はラテン語で「点」や「小さな穴」を意味し、アートの世界では鑑賞者の個人的な感情を突き刺すディテールを指す言葉ですよね。プリントやグラフィックに頼らず、小さなディテールを意図的に強調するブランドのアイデンティティと一致しているように感じます。
その通りです。〈PUNCTUM TEST〉は、芸術的、哲学的な概念である「Punctum(プンクトゥム)」から名付けました。哲学者のRoland Barthesが述べたように、Punctumは、個人的なレベルで静かにあなたを突き刺す、突発的で、些細ながらも力強い感覚のこと。それは一般的な解釈や概念ではなく、その人にしかわからない何かのイメージだったり、あるいは私たちの場合、衣服が個人の好みや記憶、無意識の感情とどう共鳴するかということです。それは深く個人的で親密な感覚を呼び覚ます、繊細な火花とも言えます。
– 「Punctum」は、まさにこのメディアで追い求めているようなものでもあります。この言葉の対義語で世間一般での普遍的な解釈のことを指す概念「Studium(ストゥディウム)」が多い中で、〈PUNCTUM TEST〉のような個人の記憶や感情を突き刺す「Punctum」を追求する姿勢は、面白く映ります。
ある本を読んでいる時、私たちは最初に「Studium(ストゥディウム)」の意味に興味を持ったんです。でも、深く掘り下げていくうちに、本当に心に響いたのは、その対概念である「Punctum」の方だと気づきました。そして、面白いことに、「Punctum」という言葉そのものにも「Punctum」を感じていました。その言葉は、私たちの服が表現したい感情を捉えるのに完璧な概念だったんです。

– 「Test」というワードもブランド名に含まれていますね。
「Test」という言葉を加えることで、私たちは現在進行形の探求を表現したかったんです。デザインが、着る人の心に静かでありながらも、突き刺すような瞬間をどのように呼び起こせるのか、それを常に模索し続けたいです。
– なるほど。その言葉通り、遊び心や実験性は初めて見た時から感じました。
私たちは、ファッションが「遊び」であってほしいと思っています。ある時から、服を着ることが楽しく感じられなくなったんです。ファッションシーンが予測可能で、自分のワードローブも退屈に思えてきて。だから、〈Punctum Test〉を通じて、私たちは服を着ることを単なる「状態」ではなく、「行為」として捉えたいと考えています。それは、その瞬間の喜びです。さまざまな形を試し、調整し、今日にぴったりだと感じるフォルムを見つける。これらすべての瞬間、そのプロセスこそが私たちの服なのです。服を着ることは、ただ腕や頭を穴に通すことではなく、衣服と関わりながらそれを形作り、本当に自分らしいと感じるフォルムを発見することだと思う。


– 「ひらめき」の瞬間 –
– 普段どのようなものがあなたの心に突き刺さりますか? ファッション以外のインスピレーションを受けていそうな雰囲気も感じます。
いつも意識しているのは、シンプルでインパクトがあり、あらゆる瞬間に適応できる構造を想像すること。そのためのアイデアを、Royにもらった無印良品の小さいノートにいつもスケッチをして埋め尽くしています。時にはページを破り、折ったり切ったりして具体的な形を試すこともあります。このやり方で常にアイデアをメモして、時には建築や日用品、現代アートの展覧会からもインスピレーションを見出しています。
– 最近インタビューしたアーティストも、常に断片的なアイデアを残し、それをコラージュしているといっていました。
とても大事だと思います。アイデアが結びついて偶然重なると、真の「ひらめき」の瞬間が訪れるんです。例えば「Vessel」という作品。今年の6月から7月にかけて、私のパートナーが肝膿瘍と診断され、肝臓から体外へチューブを通す手術を受けたんです。その時までは、ドレープをシンプルに作る方法を考えていましたが、彼の姿を見てから、背中の一方から始まり、翼のように反対側まで伸びる円筒形の布地を思いつきました。その布が自然に落ちることで生まれる興味深いドレープがとても気に入って、ヴィンテージショップを訪れて古着を研究し、その縫製技術や遊び心のあるディテールから学んで、制作しました。
他にも、私たちは映画から影響を受けたりもします。また、トレンドやそこから生まれる流行を追うことは避けてはいますが、尊敬するデザイナーから学び、常に新しい構造を探求しながら、自分たちなりの方法で楽しみを見つけることもします。
– ルックを見ると、女性の髪が非常に長く、ウィッグを着用しているように見受けられます。このアイデアはどのように生まれたのですか?
ルックブックのモデルはYoonaという友人で、彼女は信じられないほど流動的であり、個性的で鮮やかなエネルギーを持っていると思います。『Punctum Test 001』をローンチしたとき、彼女が私たちの作品を自分でスタイリングし、ウィッグを着用して、写真を撮ってくれたんです。その画像には否定できない「Punctum」(一点の輝き、刺すような鋭さ)があって、生々しく、遊び心がありながらも、静かに反抗的でした。その瞬間が、ルック制作の出発点となりました。彼女が自然に体現する、いたずらっぽい自由の精神を捉えたかったんです。

- 常に速くて鮮やかで、絶えず変化を繰り返してきた –
– 韓国のカルチャーシーンは今、信じられないほどダイナミックですね。国内だけでなく、様々なプラットフォームを通じて世界中のオーディエンスに届いています。この勢いの理由は何だと思いますか?
韓国のカルチャーシーンに言えることは、常に速くて鮮やかで、絶えず変化を繰り返してきたということだと思います。音楽、映画、ファッション、文学、すべてが全速力で動いているんです。しかし、このエネルギーが世界的な注目を集め始めたのはごく最近のだと思います。
– なるほど。コンテンツが一瞬で全世界に届けられる時代というのも大きいですね。最近のカルチャーシーンで面白いものはありますか?
韓江(ハン・ガン)の作品は、とても力強く普遍的に感じます。昨年、彼女はノーベル文学賞を受賞して、彼女の言葉の力が世界に届いて嬉しかったです。あなたが言ったように、プラットフォームを通じて、彼女の作品は言語の背後にある文化を深く理解した翻訳者によって広まりました。今では、プラットフォームとそこにいるオーディエンス全体が、ある種の翻訳者のような役割も果たしていると思います。Instagram、TikTok、YouTube、その他のソーシャルメディア。これらのチャネルが、韓国文化のリズム、ニュアンス、そして精神を世界に運んでいることは間違いないですし、常に脈打っていたエネルギーがようやく世界に見られるようになり、グローバルな舞台へと自然と繋がっていったのだと思います。
– 自分がよりセクシーで祝福できるような些細な違い –
– 次の作品の展望はすでにありますか?
テスト003では、「Vessel」と「6-hole」の構造を全く新しいアイテムを通じて再解釈する予定です。ブランドの初年度を振り返り、同時に今後の進化の方向性をほのめかすものになると思います。
– 今後がとても楽しみですし、アイデアの探求、実験精神の背景に服と創作への情熱を感じます。
1枚の衣服を生み出すための労力や影響力は驚くべきもので、その小さな完成形からは想像もつきません。それでありながら、服を制作することが私たちの呼吸法でもあるんです。この矛盾のようなものと共に生きるため、息を続けるために、私たちの作品は永続的でなければなりません。そして、トレンドを追いかけたり、使い捨て、目新しさや束の間のスリルを追うことなく、誰かが私たちの服を着るたびに、喜びと新鮮さを感じられることで、このサイクルを維持していきたいです。それは一時的なドーパミン、誇大広告とは全く無関係の、持続的な喜びと呼べるものです。また、私たちにとってファッションはゲームであり、何か新しいもの、紛れもなく私たち自身を明らかにし続ける、遊び心のある実験でもあるんです。

– 最後に、まだブランドページにはあなたたちのステートメントがなかったので、ブランドの目指しているビジョンを教えてください。
服は外見を反映するものと一般的には見なされます。その視点で服に接すると、ある種の服は「こう見えなければならない」というプレッシャーにあなたを閉じ込めてしまうこともあります。私たちは、そうした状況を解放する最前線にいたいと思っています。他人によって定義された美しさや官能性ではなく、その服を着た日に、自分がよりセクシーで、より美しく感じられ、自分自身を完全に認めながら祝福できるような些細な違い。この原則に導かれながら、私たちは「Punctum」を届ける衣服とイメージを創造し続けます。私たちは〈PUNCTUM TEST〉を衣服の領域を超えて、人生のあらゆる側面を、私たち独自のレンズと色彩、そして遊び心を通して解釈することを目指しています。

■ Biography
PUNCTUM TEST
韓国 / ソウルを拠点にRoy LeeとChae Youngjeeにより設立されたファッションブランド。学生の時に立ち上げ、2025年より本格的に活動。ラテン語で「点」や「小さな穴」を意味し、個人的な感情を突き刺すディテールを指す言葉「Punctum」からインスピレーションを受けながら、「女性が感じる官能性」を遊び心ある表現で追求する。
Website:https://www.punctumtest.info/
Instagram:@punctum.test






























