スコットランド出身で、伝説のシンガーソングライターArthur Russellとも深い関わりのあったNirosta SteelことSteven Hall。約40年間に及ぶ創作、再構築、そして「永遠に未完成」のプロセスの集大成的作品『My Skyscraper』をリリース。そして今作は昨日〈Pitchfork〉で9.0というハイスコアで「Best New Music」に選出されたことが発表となった。

『My Skyscraper』は、彼の膨大なアウトプットの表面をなぞったに過ぎない。すでに世に出ている音源も多い。1999年の衝撃的なライブ録音(といっても通常のライブ盤とは一線を画す)『Cool Fire』、Arthur RussellプロデュースのEP『Foxy Pup』、そしてRussellの遺志を継ぐために結成されたユニットArthur’s Landingでの全活動など。しかし、そこには常に稀有で独特な思考とモチーフの連なりがある。クィアなラブソング、夜の生活、目が回るような欲望、そしてかつての恋人たちへの頌歌。Arthur Russellと共有していた「アンチ・ビブラート」の精神は、ボーカルの伸びやホーンの演奏に常に息づいている。セクシー極まりない「ウィンドウ・ビュッフェ・ディスコ」、耳たぶを舐めるような独白の「クラウドフォーク」、そしてポスト・レイヴの「サウナ・ウェーブ」。

『My Skyscraper』は、昨年Hallがレーベルに送った数時間分ものロングフォーム・ミックスの中からを厳選された楽曲が収録されている。曲の並びから気づかされるのは、彼がRussellと同様に楽曲制作において「永遠に彫刻し続ける」ようなアプローチをとっていることだ。ある曲のフォーク・バージョンがあれば、同じ曲のクラブ仕様のディスコ・バージョンも存在する。その狂気じみた整理プロセスの下、メタデータの確認を三重に行われたという。

80年代初頭に元々Madonnaのために書かれたダンス・ナンバー(「ENGLISH PARTY」)や、常軌を逸したファルセットが響くインダストリアル・スラッジファンクの傑作(「YHEMA」)が収録されている。「BOSS TRIX (BENNY’S SONG)」は、台湾人の元恋人に捧げられた官能的なディープ・ハウスだ。彼の深い知性と、自分の頭を飛び越えるほど射精する能力を讃えた曲であり、今思えば、この楽曲はその行為そのものの響きを(良い意味で)体現している。
2枚組アナログ盤のSide Cには、Arthur Russellと共に録音された2曲の超ロングフォームなアコースティック・メディテーションが収められている。ここには、22分以上に及ぶ彼らの「Buddhist Bubblegum」的な実践が、孔雀が羽を広げるがごとく鮮やかに記録されている。Russellの超越的なドラムが推進力を生み、Hallがメロディと詩の公案を一つひとつ紐解いていく。圧巻の「GO FOR THE NIGHT」は、Arthur Russellとの共作であり、ここではArthur’s Landingと共に演奏されている。Sadeを彷彿とさせるラウンジ風のエレガントなジャズ・ポップであり、これからクラブへ向かう夜の静かな高揚感を捉えている。あいつは来ているだろうか?それを確かめる方法はただ一つ。ヘッドフォンを装着し、夜へと繰り出すことだ。


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