Interview / First Hate

2010年代半ば、デンマーク/コペンハーゲンはインディーシーンの新たな震源地として世界を熱狂させた。その中で最も異彩を放っていた、Joakim Wei Bernildと Anton Falckによるデュオ、First Hate。彼らはデビューアルバムから今作『Cotton Candy』までの5年間で世界の何を見て、感じ、それをどのように音楽で表現したのだろうか。

英語版はこちら。
English version of the interview available from here.

ー 今生きていること、そしてこれからの未来にとても感謝している ー

− まず初めに、読者に向けて自己紹介をお願いします。

Joakim : キャッチーなメロディーとそれに矛盾した感情を持つ2人組のムカデ人間です。

Anton : こんにちは、First Hateです。デンマークのコペンハーゲン出身のエレクトロニック・アート・ポップ・デュオです。僕たちは10代の頃からベッドルームバンドを始め、コンピューターで作った曲で熱狂的なライブを世界中で行なってきた。 ニューアルバム『Cotton Candy』は現在発売中だからチェックしてね。

1stアルバム「A Prayer for the Unemployed」から今回の2ndアルバム「Cotton Candy」までの5年間、世界では難しい問題がたくさん起こりました。二人にとってこの5年間はどのようなものでしたか?

Anton : 世界は変わり続けていて、地球では常にクソみたいな問題が起きている。そして、人生で初めて戦争とパンデミックが身近なものになってしまった。僕たちはロシアとウクライナの両方に友人がいて、彼らのことが恋しいし心配なんだ。世界が終わりに近づいているように見えることもあるけど、僕たちは今生きていること、そしてこれからの未来にとても感謝している。戦争の最中に音楽をリリースし、アルバムを祝うことはとても不思議な感じがするけど、これが僕たちの仕事であることを忘れてはいけないんだ。そして、 COVIDや気候問題、パレスチナの問題、進行中の難民問題、その他僕たちが耳にしない戦争があることも忘れてはならない。

Joakim : この5年間を振り返るのは難しいね。この2、3年の家で過ごした時間は、ツアーに明け暮れていたそれまでの数年間とは対照的だった。それでも、流れに身を任せてどんな状況にも対応していくしかないと思う。Antonが言ったように、僕たちはここにいて自分たちの仕事ができることに感謝しているんだ。

アルバムのリード・シングル「Commercial」では資本主義が抱える問題や資本主義者の欲望についても言及されていますね。

Anton : そうだね。僕の考えとしては、世界はお金によって成り立っていると思う。僕たち自身もこの車輪の一部であり、それを養い、その中で生きている。この曲は自分がその恩恵を受けながらも、刑務所のようなこのシステムに囚われていることを歌っている曲でもある。あと、サウンドデザインの時、実は東京をよくイメージしていたんだ。歌詞は「残酷な天使のテーゼ」にインスパイアされているし。最初のロックダウンの時、青い車を運転しながらこの曲の歌詞を全部覚えたんだよ!いつか日本に来て、カラオケで歌いたいな。
“ZANKOKU NA TENSHI NO TEZEEEE MADOBE KARA YAGATE TOBITATSU ! ”

ー アンダーグラウンドとメインストリームの間に位置づけたい ー

– 「Commercial」以外にも、アルバム全体を通してサウンド面では前作よりもポップな印象を受けました。

Anton : 僕たちにはキャッチーなアンセムを書く特別な才能があるんだ。メインストリームのラジオ局の人はFirst Hateはポップミュージックではないと言うけど、決めるのは誰なんだろうね。僕たちは、自分たちをアンダーグラウンドとメインストリームの間に位置づけたいと考えているんだ。ポップはタブーだと思っている人たちや、ポップが好きでチャレンジしてみたいという人たちへの入り口として。新しいアルバムとその中にある様々な雰囲気には満足していて、楽曲制作やミュージックビデオ、アートワーク、グッズや写真を作るのも本当に楽しかった。音楽の核は同じだけど、サウンドは確かに新しいね。

– アートワークでは鮮やかなヘアスタイルが目立っていますね。こうしたビジュアルは音楽やアルバムのテーマと関連しているのでしょうか?

Joakim : そうだね。このアルバムのメインテーマのひとつでもあって、タイトルのインスピレーションにもなっているのが、”Rush “の言葉なんだ。例えば、綿菓子への甘い衝動は、触ると無に帰し、べたべたの指だけが残るとか。ビジュアルは、夜のテーマパークとキャンディーショップから逃げ回る2人の泥棒からインスピレーションを受けたんだ。

ー コペンハーゲンの現在の音楽シーンは変わってきている

話が変わりますが、お二人が住むデンマークについてお聞きします。日本では、デンマークは幸福度の高い国として紹介されることもあります。実際にデンマークに住み、世界中でライブをしてきた二人から見たデンマークとはどのような国ですか?

Joakim : デンマークは非常に豊かで、国民の多くにとってここでの生活は本当に楽なんだ。僕も幼少期はそれが当たり前だと思っていたし、ほとんどの人は自分たちがどれだけ楽をしているか気づいていないように思うね。でも、自由な時間が多い分実存的な不安を抱く余地はいくらでもあるんだ。デンマークの人々はあまりスピリチュアルではないから、より高い目標がないと人生がすぐに無意味なものに思えてしまうこともあるんだ。

– そうなんですね。IceageのEliasが別の媒体のインタビューで、「デンマークの幸福度が高い理由は、抗うつ剤を使う人が多いからだ」と発言したことはただの冗談ではないみたいですね。

Joakim : ” 世界一幸せな国 “なんてバカバカしいし、抗うつ剤についてはEliasの言うとおりかもしれないね(笑)。

Anton : そもそも、幸福度を測るのは不可能なことだと思う。デンマークは様々な面で良い国だよ。欠点はたくさんあるけど、持っているものを共有し、ここに住む人々に安全を与えるという良い政治システムを持っていると思う。でも、難民や移民がデンマークの国境に入ることに対しては非常に厳しいんだ。悲しいことに僕たちの国はとても閉鎖的で、政治的に差別的な国でもあるんだ。コペンハーゲンでの生活は楽で楽しいけど、時には少し楽すぎることもある。 どこでも友達に出会えるのはいいことだけど、ちょっと内輪な感じが多くて、みんな元恋人同士って感じなんだ。

2010年代半ば、お二人を含めたデンマークの音楽シーンが日本でも注目されるようになりました。それから数年が経ちましたが、現在のデンマークの音楽シーンはどうなっているのでしょうか?

Joakim : コペンハーゲンの今の音楽シーンは少し変わってきている。相変わらず同じような会場だけど雰囲気は新しくて、以前のギターバンドと比べるとよりエレクトロニックで遊び心があるように思う。僕が観るライブはほとんどが実験的なポップスで、Debbie Sings、Ryong、Ydegirl、Yangze、Francesca Buratelli、Devil、Haloplus+、Angel Weiといった新しいアーティストにはかなり期待しているんだ。最後の作品は僕のソロプロジェクトなので、まずはそちらをチェックしてみてね(笑)。ベルリンのレーベル<Yegorka>からリリースされて、日本のアーティストDoveの作品もリリースされたばかりなんだ。

– 日本といえば、写真家でもあるKoki Nozueさんなどお友達がたくさんいるようですね。

Anton : 2015年に写真家のYuki Kikuchiがコペンハーゲンに来た時、泊まるホテルがなかったから僕の家に泊まって、友達になったんだ。そして翌年、コペンハーゲンのバーでKokiとYüksen Buyers HouseのYusuke Takamotoにも出会った。世界は広くて狭い。日本に来たとき、Yüksen Buyers HouseとCEMETERYでツアーをしたんだけど、そこにまたKokiがいたんだ。
12歳の時にドラゴンボールを読んで以来、日本と日本文化が大好きだったから夢見た国を旅できたことは最高の体験だった。本当にいい思い出ばかりだよ。

Joakim : Kokiと最後に会ったのは日本滞在の最後の夜、高円寺のレストランだね。その夜は僕たちとKoki、CEMETERY、そしてYüksen Buyers Houseのメンバー全員と路上で長い別れの挨拶をして、歩道でポーズを決めて大きな集合写真を撮ったんだ。みんなに会いたいよ。

– 現在計画していることや目標などはありますか?

すでに新しい音楽、新しいミュージックビデオに取り組んでいるし、マーチャンダイズやバイナルも本当にもうすぐだから期待していてね。近いうちに日本に戻って、日本のテレビでライブをすることが夢なんだ。もしどなたかサポートしていただける方がいたら、連絡してください!

最後にこのインタビューを読んでいる人へメッセージをお願いします!

日本のライブで会えることを楽しみにしているよ。思っているよりも早く実現するかもしれないね。


■Release Information

ARTIST:First Hate

TITLE:『Cotton Candy』

RELEASE DATE:2022. 5. 27

LABEL:Escho / Cascine


■Biography

First Hate

デンマーク / コペンハーゲン出身のJoakim Wei Bernild と Anton Falckによるエレクトロニック・アート・ポップ・デュオ。2014年にセルフタイトルEP『First Hate』が話題を呼び、2017年にデビューアルバム『A Prayer for the Unemployed』をリリース。エレクトロ・ポップを軸にジャンルを超えた音楽性は世界中で話題を呼び、中国を拠点にアジアツアーを敢行。日本ではYüksen Buyers House、Luby Sparks、Strip Jointらと共に周ったほか、ヨーロッパや中国など世界中で音楽ファンを熱狂させてきた。2022年、5年ぶりの2ndアルバム『Cotton Candy』をリリース。