ORM初となる国内アーティストへのインタビュー。今回は東京のアンダーグラウンドシーンで注目を集める4人組、Sugar Houseへ独占取材。未だ謎に包まれた彼らの活動と、先日リリースされたシングルについて伺いました

(※今回のインタビューではバンドメンバー全員(Gt./Vo小林、Gt.内田、Ba.青木、Dr.牧山)に回答していただきました。敬称は省略させていただいてます。)

ー「店員さんが繋げてくれて…」ー

バンド結成の経緯について教えてください。

小林:僕とBa.の青木は小学校からの幼なじみなんですが、まず僕が青木を誘って青木がベースをやることになりました。その後は他のメンバーを探してたんですけど、たまたま2人で入った高円寺の古着屋で、店員さんとバンドやりたいって話してる子がいて、その店員さんは僕たちがバンド始めようとしてメンバーを探してることも知っていたので、その場で店員さんが繋げてくれてGt.の内田が加入しました。その2週間後くらいに内田の紹介で、Dr.の牧山が加入して、2019年の6月頃にSugar Houseを結成しました。

内田:僕と牧山も古着屋で音楽の話で意気投合して仲良くなりました。丁度ドラムがいなかったので誘ったら加入することになりました。笑

牧山:バンドやろうって言われた時は、めんどくさいなって思って断ったんですけど、内田に会うたびに誘われたので、サポートならと思ってやってみることにしました。実際スタジオに入って、小林の曲聴いたらすごい良かったので是非加入したいと思った次第です。

Sugar Houseの楽曲を初めて聴いたのがYouTubeにアップされている“Control”のMVを見た時でした。曲からは、テン年代前半、とりわけDIIVや初期のBeach FossilsらUSインディー、またMolchat Domaなどのロシアのダークウェイブを連想しました。曲を作る上で影響を受けているアーティストやバンドは何かありますか?

小林:曲は全パート僕が作っているんですが、Sugar Houseは特にCaptured Tracksのバンドからのサウンドの影響は強いと思います。あとはSonic youthなど90sオルタナから影響されてる部分はあるかもしれません。

現行の日本のインディーシーンでも海外と共鳴するようなサウンドアプローチのバンドが登場しており、Sugar Houseもその中に含まれるように感じます。活動する上で海外の音楽シーンを意識することはありますか?

小林:僕自身海外の音楽を聴くことは好きですが、現状海外のシーンを意識することはないです。

今まで行ってきたライブを見ると下北沢が多いのですが、このコミュニティーで仲の良いバンドやアーティストはどなたかいますか?

小林:Barbican Estateは最近よくイベントで一緒になったり、僕らのリリースパーティーにも出演してくれたり、よくしてもらってます。曲はもちろん彼らの人柄、アートワークも大好き!

今年の一月にリリースされたRhyming Slang主宰のコンピレーションカセットに“Control”が収録されていましたが、Rhymingさんとの繋がりはどのような経緯でできたのでしょうか? また、“Control”のMVを撮影したKoki Nozueさん(ex. Ykiki Beat)との繋がりについても教えてください。

内田:野末さんとの繋がりは、Batman winksという昔から好きなバンドがありまして、そのメンバーと仲良くさせて頂いてました。その方の紹介で野末さんと出会いました。その後、野末さんが知り合いとレーベルを立ち上げることになり、そのレーベルにアーティストとして加入することになりました。

小林:Rhymingのすーさんという方から誘っていただいた、Rhyming主催のDon’t Countdownというイベントが僕らの初ライブだったんですけど、そこからの繋がりで、コンピレーションカセットにも参加させていただくことになりました。

ー「自分の直感的、本能的な部分を音楽として表現したい」ー

先日リリースされた両A面シングル「Normal04 / Dry」についてお聞きします。まずはそれぞれの曲のタイトルの由来とコンセプトについて教えてください。

小林:テーマに沿って曲を書けたことがなくて、願望だったり疲れだったり怒り、その時浮かんできた感情的な部分を歌ってるので、どういう気持ちで書いたか聞かれたときに自分でも言葉で上手く説明できない、分からないっていうのが正直なところです。

コンセプトが作り込まれたものというより、自分の直感的、本能的な部分を音楽として表現したいと思っています。タイトルに関しても完成したものを見返した時に、表現としては比喩を多く使ってるけど、歌ってる事はこうなりたいとか、ああなりたいけどなれないなとか、ごく普通のことだなと感じたり、Dryと文字を並べたときのバランス的に数字をいれてちょっとした違和感を出したかったからNormal04になっただけで、Dryも歌詞に出てくる人物が干からびているように見えたからDryっていうくらいでタイトルに深く意味はないです。

どちらかというとタイトルに関しては、ラフなテンションで、あとは文字に起こした時の見え方だったりバランスに気を使っています。そこに明確な意味がなくても、自分がこれだ、なんかいいなと思う、直感、本能、感覚的な部分を大切にしたいので、うまく説明できないですがそういったところ含めて僕の表現の共有方法、作品だと思ってくれたら嬉しいです。

サウンドプロダクションにはDYGLのKohei Kamotoさんを迎えておりますが、彼と制作するに至った経緯を教えてください。

小林:レコーディングをするにあたって野末さんに最初デモを聞いてもらった時に、野末さんから嘉本さんを紹介していただきました。僕らもDYGLが好きということもあって、お願いすることになりました。

ー「実物を所有するということは、よりリアルなアートを感じることができる」ー

本シングルは今年のRecord Store Day Dropsにて7インチでリリースされますね。ストリーミングが主流になりつつある現代において、フィジカルで音楽をリリースすることへの意義やフィジカルの音楽に対して思うことはありますか?

小林:気軽に安価で便利なコンテンツができれば、音楽だけでなくみんなが利用するということは当然のことかと思いますし、僕自身もサブスクはとても便利なので多用しています。ただフィジカルにも聴くまでの所作にワクワクしたりと魅力を感じますし、僕たちはアートワークにもこだわりを持っています。実物を所有するということは、よりリアルなアートを感じることができると思っています。インターネットで全てを見ることができるけど、美術館で見る絵、自然、スポーツ観戦だって実際にその場にいったり、手に取ることでまた違うものを得られると思います。サブスク、フィジカルはそれぞれに良さがあって、僕にとってはそれだけで十分なことなのかなと感じています。

普段はどのような音楽を聴いていますか?加えて、最近聴いているものでオススメのものがあれば教えてください。

小林:僕は特に外の環境にいるときにストレスを感じたり精神的に参ってしまうことがあるんですが、ボンイヴェールは僕にとって一種の薬のようで、聴いてると精神だけが遠くに行くような感覚になれてリラックスできるので聴くことが多いです。

あと僕はポップスも好きなので、Lorde、テイラースウィフトなども好きで聴きます。

インディーを探ったり聴くことは今も好きですが、以前に比べて少なくなったのかなと思います。

聴いて欲しいと思うのは、解散してしまったんですがGalileo Galilei。いわゆる青春ギターロックバンドっていう印象が強いかもしれないですが、特に2nd以降のアルバムやカップリングなどには現行のインディーや、60s〜80sなどの要素もうまく取り入れたりすごくいい曲がたくさん隠れてるなと感じます。

歌詞もすごく好きです。

牧山:友人にお勧めされた、ハービーハンコック、エイミーワインハウス、ケイトラナダはよく聞いています。ジャンル、年代はどれも違いますが、ドラムの各パートが複雑なリズムパターンばかりで勉強にもなるし、人のお勧めはその人の当たり前を知れるので楽しい。おすすめはエイミーワインハウスのリオネスなんとかのアルバム、ボサノバやレゲエ、ポップス、ソウル色なんジャンルの織り込まれた楽しいアルバムです。

青木:最近だと、新譜が出たIceageをはじめ、communionsやLiss、Lust For Youthなどジャンルレスではありますが、10年代からのコペンハーゲンのシーンが気になっています。また、気になったバンドやアーティストのインタビューや記事を読む事も多く、影響を受けた音楽を数珠繋ぎ的に聴く事も多いです。

内田:最近だとBig ThiefのメンバーでもあるAdrianne Lenkerや最近この界隈で気になっているレーベルKeeled ScalesのKaty KirbyとRenne Reedはかなり聴いてます。Adrianne Lenkerは今の自分の心情に自然と入ってきて聴いてて心地良いです。レコーディングを森林の中のキャビンで撮っているみたいで聴いててその場の空気感とか景色が分かる音になってて作品として自分もやってみたいなって思わせる作品です。Katy Kirbyは映像作品にすごく惹かれます。Adrianne Lenkerと似ているとこがあって演奏もカメラも1テイクで撮っているというとこ。なんかその場の時間、空間を大切にしているのだと感じて見てて自然と微笑んじゃいました。Keeled Scalesはそんなアーティストが多くて好きですね。助けられてます。

パンデミックはあらゆる方面で様々な影響を及ぼしていますが、バンド活動などで影響を受けていることはありますか?

小林:ライブを思うようにできないことが1番大きいです。

今後のバンドとしての目標について教えてください。また今年の活動の予定で決まっているものがあれば教えてください。

小林:いろんな方法を試したいと思っています。たとえば今作でいうと、DYGLの嘉本さんがサウンドプロダクションとして関わっていただいて、学んだこともたくさんあってとても勉強になることが多かったです。自分達だけで作っていくことにも挑戦してみたいし、ライブも、全てにおいて、自分達に合うものがなんなのかを模索していけたらと思っています。後はこれからEPの制作に取り掛かろうとしてるので、良い作品を作れたらなと思います。

最後に、読者の方へメッセージをお願いします!

ライブ会場でお会いしましょう!


■ Release Information

Sugar House – Normal04 / Dry

Release:

(Digital) 4/7/2021

(7 Inch) 6/12/2021

Label:WAREHOUSE TRACKS


Biography

Sugar House

東京を拠点に活動する4人組インディーロックバンド。Captured TracksやDIIV直系のダークなアプローチを取った楽曲を鳴らす。テン年代前半のUSインディーの初期衝動を詰め込んだようなサウンドが話題となり、下北沢周辺のイベントに数多く出演。今年、待望のデビューシングル「Norlmal04/Dry」をWAREHOUSETRACKSよりリリース。