ベルギー出身のThe Haunted Youthの独占バンドインタビュー。先日リリースされた「Coming Home」、注目のデビューシングル「Teen Rebel」、そしてThe Haunted Youthのストーリーについて伺いました

ーKevin Parkerは、いつも大きなお手本ー

どのようにバンドが始まったか教えてください。

Joachim : このバンドは、基本的には僕のベッドルームで始めたものなんだ。だけど、僕が作っている音楽は、バンドで演奏されるべきものだと常に感じていた。それで2019年に作ったデモ・アルバムを中心に結成したバンドが現在ツアーをしているこのメンバーになったんだ。メンバーはみんな大学で出会って、僕とHanne (シンセサイザー)の2人は同じ建物に寮部屋を持っていた。その時にお互い音楽を演奏していて、自然に2人で音楽を創ったんだ。

あなたの音楽を聴いて、Beach Fossilsや Slowdive, The Cureなどのドリームポップやシューゲイズを思い起こしましたが、他に影響を受けたバンドなどはいますか?また最も影響を受けたバンドやアーティストを教えてください。

Joachim : 正直なところ様々な影響を受けてきたし、その多くは音楽でさえもなくて。それでも本当に影響を受けたバンドといえば苦労していた10代の頃、Mayhem、Darkthrone、Xasthurなどのブラックメタルバンドを主に聴いていたんだ。

 これらのバンドに夢中になりすぎて、他のジャンルの音楽慣れ親しむまで長い時間が掛かったけど、当時の僕にはそれがすべてだったんだ。これらのバンドは言葉で説明するよりも自分の気持ちを理解してくれたし、今でも僕の全てであり続けている。多分、僕らの “ゴス・インディー “の雰囲気は、ここから来ているのだと思う。

そしてちょうどこの頃に、僕の祖父の趣味部屋で奇妙なデモテープを作り始めて、そこにマイクとテープデッキがあったんだ。最終的にはその頃、Acid GhostやCurrent joys、Ruby Haunt, Mazzy Star,..などのアメリカのインディーバンドをたくさん聴くようになった。

これらのバンドを発見したとき、新たに自分が何を求め、何を感じさせたいかを見つけれたような気がしたんだ。この音楽を聴いていると、美しく、そして破壊的でないやり方で、自分の痛みに触れることができ、孤独を感じることは少なくなるんだ。それと同時に地球の反対側で、君と同じように感じている人がいることも知れるんだ。

 また、Tame ImpalaのKevin Parkerは、いつもお手本になっている。いつも彼に共感していたし、少なくとも彼が音楽の中で語る人物とは、青春時代に同じような苦労をしてきたような気がしたんだ。彼がベッドルームで自分の作品を作り、一人ですべてをこなしてきたことを知っていたし、たとえ彼が不安定な男だったとしても、自分のために作品を作り、彼自身の表現をとても正直に伝える勇気があると感じたね。僕がアーティストと個人的なつながりを感じたのは初めてだったし、本当に刺激的で、音楽を作るという夢を追い続けることができたんだ。今日の自分の音楽への取り組み方を形成するのにかなり役立ったよ。

ー「人生で初めて僕の本当の姿を認めてくれる人たちと一緒にいて、僕は本当に自由だった」ー

今回リリースした「Teen Rebel」では若者の葛藤や反抗について表現されていますが、これは実際にあなたが体験したものでもあるのですか?

Joachim : 僕にとって「Teen Rebel」という曲は、たくさんのことを同時に意味する。他の人のために「Teen Rebel」を定義するのはあまり好きじゃないけど、自分にとっての「Teen Rebel」は、共通の友人であり、母親の家で一人暮らしをしていたシルケが亡くなったときに、その家に集まってできた友人たちとのグループのことなんだ。「Teen Rebel」のアートワークで手首に入れた「N9」のタトゥーは、その家でみんなが入れたもので、みんなで過ごした家の住所を表している。

僕たちは、家庭での問題から逃げ出すために多くの時間をそこで過ごしていて、避難所のようなものだったんだ。もちろん、僕たちは若くて無謀だったから、たくさんのドラッグを飲んで、家の地下室でパーティーをしていた。結局、それが原因でお互いにいろいろなことがあったんだ。でも、その経験と引き換えに上手く生きていける世界を交換できたとしても、そうはしなかっただろうね。人生で初めて、僕の本当の姿を認めてくれる人たちと一緒にいて、僕は本当に自由だったんだ。だから、僕にとって『Teen Rebel』は、そのことを懐かしんでいるものでもあるんだ。たくさんのバカなことを一緒にした友人たちを祝福するためにね。

※「N9」のタトゥー、「Teen Rebel」の舞台裏は下記の動画より

The Haunted Youth – N9 : THE TEEN REBEL STORY

https://youtu.be/EV_Oz-PfIGg

ー「世界はその答えを求めているように感じるんだ。」ー

セカンドシングルの「Coming Home」はどのような楽曲でしょうか?

Joachim : 「Coming Home」という曲は、私にとって「家に帰る」ように感じられると言う意味でのインストゥルメンタル曲として始まった。悲しい物語の良い終わり方、ベルギーの長くて悲しい冬の後に最初の暖かい日がやってくる春の感じ方だ。この感覚に基づいて曲のタイトルを決める時、この曲が自分にとってどんな意味を持つのか、どんな内容にしたいのかを発見し始めたんだ。というのも、両親が離婚して家がバラバラになってしまったので、家を求める気持ちが強かったんだ。何人かの家族とは良好な関係を築いていたけど、家族の中でくつろぐことはできなかった。僕は少し変わっていて、そしてみんなも僕を変わっているように感じさせた。本当の意味で受け入れられていると感じれなかったんだ。それが一番の悩みであり、「Haunted Youth」のコンセプトでもある。僕がこのようにバンド名をつけたのは、自分の世代のフリークたちがこの音楽のために集まって、一瞬でも家にいるような気分になってほしいと思ってからだ。この曲では、自分の過去と向き合い、何かを吐き出さなければならないと思い、即興で歌っているうちに歌詞が浮かんできたんだ。

最初に歌詞を録音したときは、まだ言葉とのつながりを感じられなかったけど、音楽的には上手くいったね。しばらく放置していたこの曲に戻ってきたとき、ニュースでは Black Lives Matter運動が話題になっていた。人種差別を経験したことはないけど、彼らが経験したことに深く共感し、この曲を思い出した。そしてこの気持ちを持っているのは私だけではないとわかって、この曲は私だけのものではないと思ったんだ。

 私が好きな曲は、普遍的な曲で多くの人を感動させることができると同時に、自分の感情を深く個人的なレベルで表現した曲であり、世界はその答えを求めているように感じるんだ。

“なぜ人々は共に生きることが難しいのか?” “なぜ私たちは家に帰れないのか?”

“私たちは本当にそうしたいと思っているのだろうか?” “そうするべきなのか?”

努力しても限界があるような気もする。そのような着想から歌詞には闘争心を感じさせ、サウンドにはその闘争心の終わりを感じさせるものにしたかった。また、この曲が「Teen Rebel」と絡んでいるのは、あの家の仲間たちが家のような、家族のような存在だったという事実、家のような、ある種の家族のようなものだったと言うことも影響している。

ー「ベルギーにはとてもエキサイティングで緻密なアンダーグラウンド・シーンがある」ー

まだ「Teen Rebel」と「Coming Home」の2曲しかSpotifyにはありませんが、多くの人がThe Haunted Youthのファンになり、高く評価しています。このような状況は想像していましたか?

Joachim : 全く期待していなかったよ。でも、自分の音楽に不安を感じていたわけではなくて、自分のために作ったものだから何かが起こるとは思っていなかったんだ。ただ、自分がこの曲を愛していたし、それを感じてくれる人がいるかもしれないとは思っていた。短期間でこのようなことが起こるとは、本当にエキサイティングだよ。

新曲やアルバムのリリースの予定はありますか?

Joachim : 来年中にリリースする予定のデビューアルバムにはすでに取り組んでいて、ライブではすでに演奏していても発表していない曲がたくさんあるんだ。それに、いつも新しい曲を書いたり、音をいじったりしているよ。

ベルギーのロックシーンはどんな感じでしょうか?他にもあなた達のような素晴らしいバンドはベルギーにいますか?

Joachim : 自分がベルギーシーンにそれほど深く関わっているとは言えない。主に自分のバンドと他の数人の男たちと音楽を作っていて、ほとんどの時間を孤立して過ごしているので、何が起こっているのかほとんど知らないんだ。少なくとも私が言えることはベルギーのシーンは本当に独自の世界ってことだね。ベルギーのほとんどのポップスが大嫌いだけど、ベルギーにはとてもエキサイティングで、緻密なアンダーグラウンド・シーンがある。膨大な才能とビジョンを持った数人の人たちがいて、僕が音楽に対して大切にしているもの全てを生かしている。けれど、ベルギーのアンダーグラウンド・ミュージックの問題点は、ある意味でベルギーからほとんど出て行かないことで、ある意味で閉鎖的なんだ。せっかくクールなバンドがたくさんあるのに、なぜなのかよくわからないね。

FARRMをチェックしてみて欲しい。彼らはSpotifyで “The Belgian Underground “というプレイリストを配信していて、この地域で起こっているエキサイティングな出来事をよく表しているんだ。重要なベルギーのシーンの一部で起こっている刺激的なことがよくわかる。今、「The Guru Guru」というバンドの「Point Fingers」というアルバムを聴いていて、彼らは、実はかなり前からの友人で、昨年に僕が作るものとはかなりかけ離れたアルバムをリリースしたんだけど、説明できないほど僕の心を捉えているんだ。彼らは僕の音楽とは違った形で、今の時代で感じていることを表現している。そして、このアルバムで発揮されている歌詞や音楽の妙技のレベルは非常に高い。

Teen Creepsは僕の地元のバンドで、本当に大好きなバンドだ。Sonic Youthをポップにしたようなバンドで、とても良いソングライターでもあるし、将来的には、彼らとのコラボレーション・ソングを作るかもしれない。

 また、The Haunted Youthのシンセサイザーの女性によるLINDAという非常に新しく、スウィートなプロジェクトがあって、僕が聞いた中で最高のダンスミュージックだね。Crystal CastlesやEarth Wind &Fire、KAYTRANADAの影響を受けている奇妙なミックスだね。彼女のインスタグラムもあるからチェックしみてください。

<Teen Creeps>

The Haunted Youthと同じベルギー出身のバンド。オルタナミュージックの影響を感じさせ、将来的にThe Haunted Youthとのコラボの可能性もあり注目のバンドだ。

最近はどのような音楽を聴いているのでしょうか?

Joachim : 正直なところ、音楽を数ヶ月間ほとんど聴かなかったんだ。何となくだけど、静寂がとても好きで。しばらくの間インスピレーションを得るのに苦労していたんだ。他の人の音楽が自分で考えたものや自分の感情を歪めてしまうのが嫌だったんだと思う。

インスタグラムでライブのリハーサルの様子を見ましたが、あなたの国ではすでにライブを開催できているのですか?

Joachim : ロックダウン中は、観客のいないライブストリームをたくさん行って、良い準備にもなったよ。 バンドとして多くのことを学ぶことができて、ステージ上で何をすべきか、何をすべきでないか、どうすれば一番よく聴こえるか、などを発見するのに役立ったね。現在、コロナウイルスの影響は徐々に減少していて、この夏にはいくつかのフェスティバルにも参加するんだ。しかし、ほとんどのライブは着席してのものになると思う。自分の音楽をそのように演奏するのはとても嫌だけど、いつかはそうなるだろうし、そうなったときには少なくとも準備はできていると思うよ。

あなた達の今年のプラン、これからの目標があれば教えてください。

Joachim : 今年はできるだけ多くのライブを行い、より長いライブセットを目指して努力していく。曲を完成させたり、シャツをデザインしたり、クリップを撮影したり…。忙しくなることは間違いないね。そして、目標としては、いつかフジロックに出演したいんだ。行ったこともないし、実際に見たこともないけど、地球の反対側にある神話的な場所なんだ。まだ定義していない、地球の裏側にある神話的な場所で、いつか音楽を演奏しに行きたいと思っているよ。面白いことに、昨日この話をドラマーとしていた時に「もしそこで演奏することができたら、僕は幸せに死ねるだろうね」っていう話もしたんだ。

最後にこのインタビューを見ている日本の方へメッセージをお願いします!

Joachim : もしあなたが、どこにも溶け込めず浮いていると感じたことがあるなら、もし人から何か言われるのが怖くて誰にも話せない葛藤や痛みを持っているなら、僕らの音楽はそんなあなたのためにある。悪い日の慰めになるかもしれない。


Release Information

The Haunted Youth – Coming Home

Release:6/4/2021

Label:Mayway Records


Biography

The Haunted Youth

ベルギーのシンガーソングライターJoachim Liebensによるプロジェクトとして2019年にスタート。DIIVやCraft Spellsに代表されるテン年代USシューゲイズに影響を受けたサウンドが特徴。友人の死や家庭環境など多くの問題を乗り越えた体験を題材にした楽曲が多くの悩めるユース年代に響き渡る。来年、ファーストアルバムのリリースを予定している。