Live Review
Smerz @WWW 27.May 2022

2021年、『Believer』をリリースした、Henriette MotzfeldtとCatharina Stoltenberによる北欧ノルウェーの先鋭電子デュオSmerzの初来日・東京単独公演がWWWにて実現。
ヒップホップやR&B、トランス、そして北欧の伝統的な民族音楽、オペラ、クラシックがシームレスに織り込まれたデュオによる特別な夜をフォトグラファーJun Yokoyamaの写真と共に振り返る。

All photos by Jun Yokoyama (IG:@yokoching)


久しぶりの海外アーティストの公演。いつになく期待感で溢れる会場にはモデルやアーティストなどの多様な顔ぶれ、久しぶりの友人との再会を楽しむ人で幸せな空気に包まれていた。そして、開演が近づくにつれ、徐々にボルテージが上がるとWWWは暗闇で静まり返り、期待と緊張感が漂う。

そんな緊張感とは裏腹に軽やかな服装と表情で二人は登場。時折お互いに目を合わせて楽しむ彼女たちのテンションはすぐに観客に伝わり、踊る人やパフォーマンスを真剣に見つめる人など、各々が自由にその場を楽しんでいた。

不穏にシンコペートするビートと甘美なストリングス、醒めたヴォーカル、リラックスした二人のパフォーマンスと未知な音のギャップが観客をリードする。スクリーンにランダムに映し出されるコラージュ、地下鉄、街中、車内、洋服や靴、ホームパーティーの写真とシンクロするように、徐々に曲のBPMも高まっていった。フラッシュバックする00sユースカルチャーの記憶を丁寧に辿りながら、会場を巻き込むその様はまるで一つの映画を見ているようだった。彼女たちの向かいには、ステージを操作するVJがおり、その存在がこの空間の重要な役割を担っていたのは間違いない。

新曲を中心にポップなトラックからダウンテンポな曲まで幅広く展開していくセットリストは、良い意味でつかみどころを感じさせない。ラウンジミュージックを通過したスムーズなグルーヴが会場を飲み込みオーディエンスの身体は自然と動き出す。楽曲が醸し出す不穏な空気とは反対に、意気揚々とライブを楽しむ彼女たちの姿は、パンデミックによって失われていたライブパフォーマンスの面白さや醍醐味を取り戻していく過程そのものだった。

海外アーティストとリスナーの関わりが希薄になっていた日本で、Smerzの音楽とVJ、そして観客が作り出した特別なステージはライブの持つパワー、海外アンダーグラウンドの冷たくも刺激的な空気感を肌で体感するスペシャルな一夜となった。


■Release Information

ARTIST:Smerz

TITLE:『Believer』

RELEASE DATE:2021. 2. 26

LABEL:Beat Records, XL Recordings


Biography

北欧ノルウェー出身のHenriette MotzfeldtとCatharina Stoltenberによる先鋭電子デュオSmerz。2017年にデビューを果たし、翌年のEP作品「Have Fun」、そして2021年のデビューアルバム『Believer』は世界を震撼させた。近年、盛り上がりを見せるノルウェー地下のクラブ・シーンからトランスやヒップホップ、R&Bと自身のバックグラウンドである北欧の伝統的な民族音楽、オペラ、ミュージカル、クラシックなどが混ざった音楽はビョークのポップと狂気を引き継ぐ。