| Interview


■Release Information


◼︎Biography


| Interview

− どの側面においても手を抜きたくない −


■RELEASE INFORMATION

ARTIST:ハシリコミーズ
TITLE:「悪いようなことばかり」
RELEASE DATE:2023. 12. 15
LABEL:not on label


■BIOGRAPHY

ハシリコミーズ

東京にて結成された、アタル(Vo.)、あおい(Ba.)、さわ(Dr.)からなる3人組バンド。2019年、アタルのみでハシリコミーズとして活動開始。同年幼馴染のあおいと美味しい蕎麦屋の娘 さわの加入によって現体制のハシリコミーズ結成。これまで2022年2月以降には自主企画を精力的に行っており、秋山璃月、ピーズ、TOMOVSKY、台風クラブ、突然少年、Gateballers、ラッキーオールドサンといったインディーズの最前線で活躍しているアーティストたちと競演を重ねている。

また、メディア・カルチャー分野からも高い支持を集めており、雑誌・装苑が選ぶニューカマーアーティストとして選出されたり、サッポロ一番カップスターのタイアップ曲を書きおろし、クリエイター箭内道彦氏の監修のもと東京藝術大学デザイン科の学生とのコラボ・ミュージックビデオを制作。2023年9月には風とロック主催の「芋煮会2023」への出演も果たしている。


| Interview

– 初めまして。今日はよろしくお願いします。

Ollie(以下、O):僕はドラム/ボーカルのOllie。

Laurie(以下、L):僕はトランペットとか色んな楽器を担当しているLaurie。

– 初めに、今年のSUMMER SONICでのステージはいかがでしたか。

O:そうね、本当に素晴らしかったよ!あれだけ多くの人が観に来てくれたことは信じられなかったね。

L:これまで行ってきたライブの中でも特に大きいものだったから、すごくワイルドだったね。アジアにも今まで来たことなかったから、本当に大きなサプライズって感じだったよ。

– 東京公演でSquidの演奏前にステージをやっていたCHAIのパフォーマンスを皆さんも観ていたようですね。彼女たちのパフォーマンスはいかがでしたか?今のUKの音楽シーンはかなりバラエティに富んでいると思うので、その視点から皆さんの目にはどう写ったのか聞かせてください。

L:実はCHAIのライブは以前にも何度か観たことがあってね。一回はパリでだったかな。前に観た時は“ポストパンクっぽい”なと思ったけど、今回日本での彼女たちのパフォーマンスを観た時はより“Jポップっぽい”なと感じたね。彼女たちが演奏のスタイルを変えたのはわからないけど、なんとなくそんな感じがしたな。

O:僕もそんなふうに感じたね。

– そうなんですね。

– 彼との出会いは偶然だったんですか?それとも一緒に仕事をするまでに何かきっかけとなった出来事があったのでしょうか。

O:彼にはいきなりメールを送ったね。今だったらできたことじゃないな。彼も〈Speedy Wunderground〉での仕事があるし、毎日何百件ものメールに追われているからね。それを考えると、自分たちはタイミングに恵まれたなと思う。彼のことはScottibrainsっていう彼がやっているバンドから知って、彼らの音楽がすごく良いと思ったのがきっかけだね。加えて、Danが過去にプロデュースを担当した作品はそのどれもが素晴らしかったのもあって、連絡してみることにしたんだ。

ー音楽的な進歩のためには、次できることが何なのかを考えることが大事ー

– なるほど。活動の中で、何か心境的または身体的に変化はありましたか。

O:精神の面では今は“大人になった”と思うね。身体的な話だと、物を持ち上げるのが楽になったという意味で、前よりも力持ちになったかな。

L:たしかに。

O:変化については難しいね。いくつものショーをこなす毎日だと客観的な視点であったり、自分自身が物事をどう感じているかを振り返る時間がなかなか取れないからね。でも、もうすぐ1ヶ月くらいの長期休みが取れるからその間に見えてくるかも。分かったらメールでもしてあげるよ。

– 現在はイギリスから数多くの面白いアーティストが登場していますが、その中でも我々は特にBlue Bendyがエキサイティングだと感じています。

O:良いね。

– Squidも彼らと繋がりがあると聞きました。

O:うん、何年か前に彼らと一緒にライブをしたことがあるんだ。僕らのマネージャーがレコードレーベルを運営していて、Blue Bendyの『Motorbike EP』をリリースしていたね。彼らは本当に楽しいやつらだよ。ブリットポップの中にパンクがあって、他方で実験的でもあるよね。

– 彼らの音楽性は他のUKのアーティストと比較しても異質で良いですよね。

A:うんうん、僕もBlue Bendyは好きだね。とても面白いバンドだと思う。

– Blue Bendyのように、他に交友関係のあるバンドやこれからを楽しみにしているアーティストは誰かいますか。

O:今だとブリストルに良いシーンができているね。例えばMinor Conflictとか良いね。あとはQuadeとかも。

L:僕らの友達のバンドKEGも良いね。彼らのライブはすごく良いよ。

– マーチについて少し質問させてください。実は今日も着て来ました。

O:本当だ!最高!

– マーチの制作やデザインにバンドメンバーはどれくらい携わっているのですか。何か細かい指示やコンセプトをデザイナーに伝えるのでしょうか、それともデザイナーに好きなようにやらせているのでしょうか。

O:基本的にデザイナーがやりたいようにさせているね。

A:たまにちょこちょこっと作業したり指示したりすることもあるけどね。

– これまでにTシャツ、靴下、キャップなどをリリースしてきましたが、今後作ってみたい商品は何かありますか。

O:卓球のラケット。結構前から卓球のラケットを作りたいねって話はしていたんだ。僕たち卓球が大好きだからさ。でも作ったところでまともな収入にはならないと思ってる。

L:遺伝子組み換えされた“Squidフルーツ”とかはどうだろう?

A:ヤバいね。

O:アンダーウェアとかはどうだろう?

– ロンドンのバンドのSorryがこの前アンダーウェアのマーチを出していましたね。

O:そうだった、先越された!


■RELEASE INFORMATION


■BIOGRPAHY


| Interview

海外の音楽シーンと共鳴し今や日本を代表する4人組ロックバンドDYGL。3rdアルバム『A Daze In A Haze』の制作話や彼らから見た日本の音楽シーンについて聞いた。

− 社会が暗い方向に進んでいるからこそ、「あえて」あの時代の享楽的な感じをテーマにしようと思った −

– まず初めに、アルバムの制作期間がどれくらいだったか教えてもらえますか。

下中:作ろうって言い出したのは2020年の7月頃で、本格的に作り始めたのは2020年の冬頃かな。

秋山:ロックダウンで大きくは動けないし、ライブとかもキャンセルくらっちゃって… だったら今は制作に集中しようって話をしたね。2020年のうちに曲をある程度作りきって次の年からは制作にシフトしていきたいって考えていたかな。もしできなかったらメンバーそれぞれ好きな楽器を一本ずつ折るって話をして(笑)。それでも結構ギリギリで、本腰入れてやったのは2020年も終わりにかけてだったと思います。

下中:1stアルバムの時は「録り(レコーディング)」自体は1ヶ月くらいで終えた気が。だからむしろもう少し今回は時間をかけたような感じではあるかも。

– アルバムの曲順(先行配信曲がアルバム前半にまとまっていることに関して)が気になったのですが…

秋山:あれはもう偶然だよね(笑)。

– 順番を見て「これなんかの意図があるんじゃないか」と思っていました。

秋山:そうかぁ、でも先行リリース曲が重なったのは意図してではないんだよね。僕らも見た時はびっくりした(笑)。それぞれの曲が出来上がってからアルバムとしてのセトリを考える感じで、どのような流れが一番良いか、曲同士の相性はどうかを考えてやったので、事前に組まれた構成があったわけではないし、足りないからこんな感じの曲を足すっていうこともしてないですね。

– 今回のアルバムジャケットにはポータブルCDプレーヤーが使われていましたね。あれはどういったコンセプトでしょうか。

秋山:アートワークに関しては時代感を想起させることを意識しました。CDプレーヤーが使われていた時代って90年代から2000年代中盤くらいまでだと思うんですけど、CDが登場してiPodが登場するまでの「はざま」の音楽の感じを表現したかったんです。コロナで社会が暗い方向に進んで、ポップスも今は暗いものが多くなっているからこそ「あえて」あの時代(90s〜00s)の享楽的な感じをテーマにしようと思いました。

– アートワークを手掛けたHirano Masakoさんとはどのように知り合ったのですか。

下中:毎回アートワークを作るにあたって悩むことが多くて。アートワークとマーチャンダイズ、それぞれのデザインを別々の方にお願いすることが多く、当然そうするとそれぞれのモノで質感が多様になってくる。それも良いのですが、今回はコンセプトを統一しようと考えていたので、マルチなことができて、尚且つ今の時代感や自分たちのやりたいことを表現してくれる人がいないかなと考えていました。ちょうどその頃にSIDE COREというアートコレクティブの方々と知り合って、その中の一人であるTohryさんを中心にアートワークをどのように進めていったらいいのかを思い切って相談したところMasakoさんを紹介してくれました。

– なるほど。あらゆる繋がりからの紹介だったんですね。

– リファレンスについてお聞きしたいのですが、今作はどんなアーティストや作品から影響を受けたんでしょうか。

秋山:自分たちの耳で聞いて、良いと思ったものを取り込みたかったんです。

下中:Soccer Mommyのフレーズからは「サンプリング」的なループ感が感じられて、今の時代でも自然と聴けるなっていう発見はありましたね。そのサンプリング感とかいいよねってメンバーとも話していました。

– 今回のアルバムは全体からなんとなくPavementの存在を感じたのですが、その点いかがですか。

秋山: アルバムに向けてのリファレンスの中にPavementやWeezer, Dinosaur Jr.などUSオルタナの存在は結構ありましたね。オルタナ的な面と2000年代初頭から中盤にかけてのビルボード的なポップス、例えばアヴリルラヴィーンとかアシュリーシンプソンとかも並行して聴いていたり。確かにPavementのコード感が良いねっていう話をしたりしていました。「Stereo Song」に関しては意図せず単語が被ってしまったのですが、意識して変えるよりむしろこのままでいいかなと(笑) 。オマージュみたいな感じでそれも面白いかなってなということで採用されましたが、アルバム全体で影響を受けたアーティストの一つだと思います。ただ、リファレンスの中には結構膨大な量のアーティストや曲があって、エッセンスとしてはそれぞれ色々な影響になっていると思います。

– 「The Search」の歌詞とSNS社会について少し聞かせてください。

Akiyama:統計が出ているかとかは分からないんですけど、今の若い人たちは人生の半分をスクリーンの前で過ごしているという言葉を聞いたことがあって。SNSからネットフリックスまで、何かしらずっとディスプレイの前に居させられているような。そういう時代の状況についての意識はこの曲に反映されていますね。

– 確かに今の若者の多くはずっと画面を見てますね。

– 今作では「Sink」がアルバムの方向性を探る上にでヒントになったとありましたがそれについても詳しく教えてください。

秋山:「Sink」はコロナの感染状況が広がる直前の那覇公演で初めて披露したんですが、その時はまだ曲の原型という感じで、完成像が掴めていなくて。その後アレンジしていく中で、アルバム全体のヒントになる音像やイメージが見えてきました。それに加えて、 アルバム制作に入る前に下中が作ってきた「Bushes」という曲の存在も、アルバム制作のエネルギーに繋がったと思います。

– 「Sink」「Bushes」ともにアルバム内でも特に印象的な感じですね。キーになってるのはかなり感じられます。

ー本物に触れることの価値、現地の作業を作品に落とし込むことー

– UKやUSでの経験で今作に影響していることはありますか。

秋山:音作りの面で勉強になったことは沢山ありました。他にも街中で見かける人種の比率や生活様式、イベントのあり方など文化的・ 社会的に「こんなことになっているんだ」っていう気づきも毎日楽しかったです。ニュースやブログで読むのとは違う、生身の体験で。歌詞のテーマや書き方など、いろんなところに影響はあると思いますがピンポイントで指摘するのは難しいかも。自分で意識してやれることと、自然に出てくることがあって、色んなレイヤーで影響していると思います。日本だけでやっていたら視点が一つだったのが、同じ音楽を聴くにしても日本から見た音楽とイギリスから見た音楽で違って見えるという気づきは、メタ的な視野の広さに繋がってよかったですね。そうじゃないと「自分はこういう音を出したいんだ」と気づけなかったことが沢山あったと思う。その点では、実際に行って見て体験したことは、相当いい経験になったと思います。

下中:絵画を研究されている方が、ロンドンに滞在した際に、日本では複製などでしか見られなかった本物の絵画を美術館に毎日通って鑑賞していたら、微妙な線の違いや色味、筆遣いに気づくようになったという話を最近読みました。自分たちの場合は美術館の体験のようなそこまで高尚なものではないけど、本物に触れることの価値は確かにあったと思います。音源とは違ったライブそのものの空気とかが感じられるので全く違いますね。現地で作業してそれを形に落とし込むことができたのはすごい良かったなって思います。

– 海外経験に関連して。過去にTrudy and the Romance* と共演したことがあると思いますが、その時のエピソードについて教えてください。

秋山:もともとTrudy は好きで聴いてたので、Londonの南の方にライブに来ると聞いて遊びに行って。会場ではメンバーがその辺うろうろしてたので「音楽いいね」って声をかけたら向こうもとてもリラックスした感じで、お互いのバンドの話を軽くしましたね。その後別のイベントで会った際に覚えててくれていて。後に彼らのツアーのタイミングでロンドン公演一緒にできないかマネージャー経由で打診したら快諾してくれました。Osloという会場だったと思うのですが、酒も美味いしテラス席も気持ちよくて。また演奏しにいきたいですね。

下中:その前にSXSW*で一緒にやらなかった?

秋山:SXSWもあったわ。Safehouseというチャンネルの企画で一緒でした。次の日かな、Austinの別の会場でお酒を飲んでたらまた彼らに会って。好きなバンドがThe Viewっていう話をしたら「しばらく前に流行ってたバンドだよね」ってなんとなくは知っている様子で。その後ロンドン公演で一緒に演奏した時に彼がその話を覚えてくれていて、ちょうどThe View*3 のギタリストがTrudyのスタッフで来てるから紹介するよってライブが終わった後わざわざ連れていってくれました。

– The Viewが好きで前にスコットランド行かれたという話を聞いたことがあります。

秋山:2018-2019年のロンドンにいた頃に、The Viewの ボーカルKyle Falconerが地元のダンディーでソロライブをするのを聞きつけて一人で遊びに行った。ほとんどアジア人を見かけないようなめちゃローカルなところでした。大学とかはあるみたいなんだけど。The Viewのバンド名の由来になったThe Bay Viewってパブがあって、そのパブは絶対に見たいなと思って遊びに行くと、パブのテラス席に地元の人たちと思われる4人くらいが楽しげに飲んでいました。中に入ろうとするとみんなすっごい俺のこと見てきて(笑)。そのうちの1人がわざわざついて入ってきて、「一体どっから来たんだ」と。それで自分がThe Viewが好きでバンドを始めた事とか、ロンドン公演を逃したからKyleのライブに合わせて地元のDundeeまで1人で来たことを伝えたら「ここの地下でSame JeansのPV撮ったんだよ」って教えてくれて。お客さんが勝手に地下室まで案内してくれたり、そこにいた人が「こいつもMV出てるんだぜ」みたいな事があったり、家族感あって面白かったですね。知らない街なのに自分のルーツを見ているようで、特別な体験でした。

ージャンル分けとルーツに対する意識ー

– みなさんから見て日本のリスナーや音楽業界にもっとこうなって欲しいみたいなものはありますか。

下中:ジャンル分けをもう少ししても面白いんじゃないかなと思っています。平井堅の昔の作品を聞かせてもらうことがったのですが、J-POPと言われていますけど、それよりどっちかっていうとR&Bなのかなと思って。思い切って平井堅のそのアルバムをR&Bの棚に置いてしまうような、そういう細分化していったらリスナーの聴き方が変わってきて様々な音楽に希望が生まれるんじゃないかなと思うことはあります。

– 確かに多くの日本の音楽がJ-POPに括られていることはあるかもしれないです。

秋山:反対するわけじゃないけど一つ意見出してもいい?(笑)

下中:いいよ(笑)。

秋山:一つのジャンルではなくて、大きい括りの方がやりやすい人もいると思う。ジャンルがあるからこそのメリットもあるけど、作り手としてはカテゴライズされた箱の中に括られたくないって人は結構いると思ってて。俺らも ブリットポップだと言われたら、別に「自分たちはブリティッシュじゃないし」とか、ガレージロックとかサイケと言われてもそれはあくまでもDYGLという音楽の一面でしかないなと思うし。そういう広い枠組みのための「オルタナティブ」って言葉だったと思うけど、それも今ではある程度この音っていうジャンル感あるしね。ジャンルとかカテゴライズするっていう話は、結構繊細でもあるなって。

下中:確かに。でも、日本の音楽の歴史でJ-POPって言葉の一般的な定義はちょっと広すぎたんじゃないかなと感じてて。分かり易すぎて便利すぎるというか。そこに対してのアンチテーゼみたいなものってもっとあってもいいと思うんだけど。

秋山:バランスによりそうだね。今はカテゴライズが曖昧だから一度しっかり日本の音楽の中でのカテゴライズを真剣に考えてみるっていうのも面白いかもしれない。全員が全員そういう意識になると、それはそれで今度はまたジャンルをぶち壊したいって気持ちになったり。でもそうやって新しいクロスオーバー感とか、新しい形でのミクスチャー感が出てくるのは良いことかもね。

下中:そういうのは見たい。

秋山:ルーツに対しての意識が曖昧だもんね。

下中:どこまでJ-POPの作家がジャンルに対して自覚的にやっているのかはわからないけど。昨日公園で高校生の子たちが「お前ヒップホップ聴くの?J-POPとかロックも聴いて見たら」っていう会話をしてて、自分はポップスって他のジャンルを包括してできてきたものだと思ってたから、本来吸収してきたものと並べられてるのを聞いて違和感あったな。

秋山:ポップスは何でも吸収できるって話はしたね。アルバムの中で、いろんなジャンルがミックスされてる感じ。国内でも海外でも、そういう傾向はある気がして。意外と自由度の高いジャンルなんだなと。逆手に取るとね。ジャンル感のはっきりしてる音楽ってその分自分のルーツになる音楽に対してリスペクトや理解度が深いからこそだと思うので勿論好きなのですが、最近の自分たちのモードだと最終的なアウトプットはジャンルに括られない自由さで表現したくて。
以前東京のライブ会場で知り合った若手トラックメイカー / ラッパーのイギリス人が、イギリスではアーティストは自分のやっている音楽の文脈に対して意識的で、逆にアメリカ人はその辺の振れ幅が大きいと感じると話していたのが面白かった。アメリカのアーティストが「自分の好きなアーティストはこれとこれです」って挙げる音楽の一貫性のなさ、逆に言えばとても自由なのはイギリスと異なって感じると。どっちがいいとか悪いじゃないし、単なる傾向なので人によって色々だと思うのですが。アメリカとイギリスの歴史や国の成り立ちの違いにも関係してるのかもですね。コミュニティへの帰属意識とか、社会の見え方はどちらかと言えばイギリスの方が日本に近いような気はしますが、マスで流行っている音楽は割とアメリカ的であったり、日本は日本でかなり独自な感じがありますよね。自分から情報を取りに行ける人にとっては、日本も色々な選択肢があって面白いと思います。

下中:作る側は置いといて、聴く側がもっとそういうルーツに対しての意識を持ちやすい環境というか言葉があってもいいんじゃないかな。僕が聴いた平井堅が「J-POP」という言葉のみで終わっちゃうと、本当はR&Bの質感が好きなはずだった人がJ-POPで止まっちゃうかもしれないし、そうなったらもったいないなって。

− クロスオーバー的な面白さ、プロデュース的観点、ムードとしての音楽、生身の緊張感 −

– 皆さんは最近どんな音楽を聴いてますか。新旧問わず。

秋山:この間ライブを観たStrip Jointっていう日本のバンドが、サイケっぽさもありな がらいろんなルーツが感じられる音楽で。日本でこういう曲作りできるバンドを あんまり聴いた事がなかったので、ワクワクしました。普通にファンです。後は、さっきのジャンルの話にもリンクするけど、クロスオーバーな「ジャンルとジャンルを超えて」別々の文化と文化が合わさって生まれるものってやっぱり面白いなと思って、最近はそういう視点で共感できるアーティストを聴いてますね。BECKとかGorillaz, 割と最近だとYves Tumorとか気になっています。

加地:自分はAlex Gの曲が好きなんですけど、最近Japanese Breakfastのプロデュースとかやってて、あれもコラボレーションとしてすごい良いなって思います。彼のちょっと不気味で異質なオーガニックさの組み合わせが、気持ち悪いんだけどなんかかっこいいみたいな。プロデュースをもっとするなら他にも聴いてみたいなって思いました。

嘉本:自分は本当に恥ずかしいんですけど、、、それこそポップスばっかし聴いてて。

秋山: 恥ずかしがる事ないよ(笑)

嘉本:とにかくカリフォルニアのビーチにいたい気分なのでRihannaとか聴いてます(笑)。「音楽作るため」とかは今は考えていないですかね。

秋山:Rihannaみたいな曲書こうよ。

嘉本:あー、でも俺聴きたいだけだからな(笑)そういう気分になりたいなぁってところで聴いてる。

下中:名古屋でオープニングアクトをしてくれたBOARDのライブをまた最近見たのですが、あのバンドのライブはすごく楽しい(笑)。「ライブ感」があって、予定調和で終わんなそうな、こっちがドキドキする感じが自然と出ていて。

加地:とにかく真面目なんだよね(笑)。ライブも「やったる」感がすごくて。

下中:そうそう、感情も籠ってて。それゆえに何が起きるかわかんないからすごい楽しい。

– ここまでたくさんのお話ありがとうございました。最後に、インタビューを読んでくださる方へメッセージをお願いします。

秋山:コロナで考えることは多かったけど、それをきっかけとしてアルバムを完成させられた。DYGLとしても個人としても変化のアルバムになったので是非聴いて欲しいです。
あとORMに対してのメッセージみたいになっちゃいますが、インスタで見つけた時から気になっていたのでこうしてインタビューしてもらえて嬉しいです。自分たちの好きな音楽をめちゃくちゃ愛を持って特集しているのを感じるし、自分らが学生の頃に周りにこういうことをしている人たちがいたら面白かっただろうなと思う様な、何かが始まりそうな特別な気配を感じますね。楽しみ。僕らも一ファンとして応援したいし、読者の皆さんもぜひORMの活動をサポ ートして欲しいです。自分たちも学生の頃から、場所や機会を作ってサポートしてくれた人たちがきっかけで多くの繋がりが生まれた。リスナーのサポートで、音楽の未来は本当に変わると思いますよ。生まれなかったはずの曲が、生まれるかもしれない。音楽好きなみなさんにはぜひ、ローカルなバンドやシーンをサポートして欲しいなって思います。あとはみんな、健康で。


■ RELEASE INFORMATION

ARTIST:DYGL
TITLE:『A Daze In A Haze』
RELEASE DATE:2021. 7. 7
LABEL:Hard Enough


BIOGRAPHY

東京発の4人組インディーロックバンド。日本でのデビュー前にアメリカでツアーを敢行し、テキサスの大型フェス「SXSW」に出演。現地で数多くのバンドと共演する中で注目を集め、2016年にデビューEP「Don’t know where it is」をリリース。翌年The StrokesのAlbert Hammond Jr.をプロデューサーに招き、1stアルバム「Say Goodbye to Memory Den」をリリースすると、国内での人気に火がつく。先進性とノスタルジーを兼ね備えたサウンドが多くのリスナーの目に止まり、同作はTower Recordsの「タワレコメン」にも選出。今年待望の3rdアルバム「A Daze In A Haze」をリリース。FUJIROCK 2021ではWhite Stageに出演するなど、さらなる飛躍を遂げる。